謡に見る生物と島人の暮らし

謡に見る生物と島人の暮らし
謡に見る生物と島人の暮らし

≪ペンガントゥレー≫
八重山諸島は20あまりの島から成りますが、ここでは尖閣諸島をはずしてみていきます。実際に人が住み社会生活をしている島は9島です。9島の中には石垣、小浜、西表、与那国のように山や川がある島と、平たいサンゴ礁の島である竹富、黒島、新城、波照間、鳩間があります。島の持つ性格は、当然そこに生息する生物に反映され、住む人間にも大きな影響を与えることになります。原生林や河川、河川域のマングローブなどを有する島には、生物の種や数も多いがそれに比べサンゴ礁の島には種や数が少ないといえます。今回は「生物の多様性とシマンチュの暮らし」というテーマにそって、古くから継承されてきた島人の声である謡を取り上げ考察します。
 黒島に「ペンガントゥレー」という歌があります。黒島の各集落の男女の食料調達の様子を歌ったものです。歌詞を見てみましょう。
自分の集落の身近なところで食料を得ているということが、よく見て取れます。この謡には踊りがついていて、実際にヤシガニの剥製を持ち込んだりして軽快なリズムにのって演じられます。 
現代ではこういった動植物に触れる機会というのは極端に少なくなりました。自然が残っているところもありますが、普段の生活の中に自然と共に生きるという感覚はなくなってきています。ここで紹介したような謡は今後民の声としてはおそらく生まれてこないのではないかと思います。日常自然との触れ合いの中で育まれてきた詩心は、遠い昔のものになりつつあります。そっくりそのまま取り戻すことはできないかも知れませんが、残してさえおけば子孫に語り伝えることはできます。そのためにも自然は大切にしていきたいものです。

石垣市市史編集委員 石垣 博孝

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