沖縄の在来馬といえば宮古馬、与那国馬が浮かぶが、かつて名馬と呼ばれた「小浜馬」の存在は意外に知られていないようだ。
若い頃、小浜馬を駆った経験を持つ識名朝三郎さんは、現在は50%小浜馬の血を引く馬もいないと話しつつ、伝統の名馬に思いを馳せる。「小浜馬は小柄だけど足が早くて力も強かった。薪運びや牛追いとして達者に働いてましたよ。草競馬の名立たる馬も小浜馬だった」。小浜島で生産された馬は、車も電話もない時代、広い石垣島で役馬や乗馬として高く評価されたが、昭和40年代に車に取って代わられ相対的に姿を消してしまった。「当時の優れた馬は、今で言うとベンツ」と識名さん。「ただベンツは金さえあれば何台でも買えるけど、名馬はそうそういなかった」。
識名さんは小浜馬を探し歩き、与那国島で母方が小浜馬という馬を見つけて繁殖。今年1月、種子取祭(平得)で走らせる機会を得たところ、他の馬とは一見して違う足取りに注目が集まった。これを好機に、馬を集めて親睦を計るイベントを呼び掛けた識名さん。「たくさんの人に見てもらって馬の良さを再認識したい。年月はかかるが伝統の名馬も後世に残していきたい」。そんな識名さんの熱心な思いを知った小浜島の仲盛公民館長も「是非この機会に連携して種の保存に努めたい」と意欲を見せた。