昔ある村の巫女が、役人に呼び出されました。役人は巫女に「お前は人の弱みにつけ込んで、大枚の謝礼を要求し、困らせていると訴え出たものが何人もいる。お前は大悪人だ」と言って、牢に入れてしまいました。巫女がどんなに無実を訴えても、取り合ってくれません。そんな巫女を見張っていた若い牢番は、とても気の毒に思って、何くれと親切にしてくれました。一年もすると、巫女はすっかり弱ってしまい、もう立つことさえできなくなってしまい、もう自分も長く生きられないことを悟りました。
ある日、若い牢番を呼ぶと、「私が死んだらガラサーになる。そして私をこんな目に合わせた人間たちにアダを打ってやる」と言い、もし夜ガラサーが鳴いたら、家の外でウスをたたいて、大きな声で自分の名を叫べ。そうすればお前の家だとわかるから、災いは逃れられる」と教えました。そして巫女が死ぬと、その夜からガラサーが鳴きながら村の上を飛ぶようになり、巫女を無実の罪におとし入れた人たちや、訴えを取りあげようともしなかった役人の家が次々に火災で焼かれていきました。
若い牢番の家では、ガラサーが鳴くとウスをたたいて知らせたので、災難にはあわなかったといいます。だからガラサーが夜鳴いて飛ぶと、あちこちの家でウスをたたいて、災難から逃れるようになって、ずっと最近までその風習が残っていたといいます。 ※ガラサー=カラス