ある村に、貧しい母と子だけの家がありました。子どもはまだ小さかったのですが、母親を手伝ってとてもよく働いていました。ところがその母親が病気になってしまい、畑にも出られなくなってしまいました。子どもはひとりで毎日畑に出て仕事をし、夜家に帰ると母親のために薬湯を作ったりしていっしょうけんめいに看病しました。そんなある日の夜、ひとりの老人がやってきて、一晩泊めてくれないかと言いました。子どもは狭くて何もないけれど、それでもよかったらと老人を心良く家に入れました。その夜が明けて次の朝、老人は「お前の親切には感心した。そのお礼にいいことを教えよう」と次のように言いました。
「ここから南に向かって一日行くと、七重に重なる山がある。その七つの山を越えて行くと、大きな木の生えている岡がある。その木の下で、白と黒の着物を着た老人がふたり碁を打っている。そのふたりにお酒をもって行くがよい。そうすればきっと母親の病気を治す方法を教えてくれるはずだ」と言って家を出て行きました。
子どもは母親にその事を話し、村の長老のところに行ってお酒をかしてもらうと、さっそく出かけて行きました。七日歩き続けて行くと、あの老人が言っていたように、大きな木の下でふたりの老人が碁を打っていました。そして子どもの差し出したお酒をおいしそうに飲んだ後、子どもに向かって地面の上に八十八と書いて見せ、小さな壷に入った薬をくれました。
急いで家に帰った子どもは、さっそくもらった薬を母親に飲ませると、すぐに母親は元気になり、その後も子どもと助けあって元気に、あの老人が地面に書いた八十八才まで生きました。皆はその老人はきっと神様だったのだと言い合って、八十八才になると、神様に感謝を込めて盛大にお祝いをするようになったということです。