昔、今の西銘という集落のある家に、とても美しい娘がいたそうです。ある時から、その集落の浜につないである船(サバニ)が夜になると誰かに持ち出されて、朝になるとまた戻してあるという事が度々あるようになりました。
サバニの持ち主は誰がだまってサバニを使っているのかと、ある日の夜、浜の近くの草の茂みにかくれて待っていると、あの美しい娘が出てきてサバニを海に出すと、ひとこぎしました。するとサバニはサッと走って沖に出て、娘が三回もこぐと、もう見えなくなってしまいました。娘の家に行ってその事を話すと、その家の親はとても怒り、娘を問いつめました。
娘が言うには、いつも南蛮まで行って、そこで男に会い、帰りには南蛮のめずらしいものを持って帰ったということでした。娘のいうように、娘の部屋の床下からは、珍しい南蛮ガメやコショウの種などが出てきたそうです。
その後、娘は遠くの森の洞穴に逃げて、そこにかくれ住んだということで、娘はそこで魚を捕る網を作ったりしていたそうです。
娘がかくれた洞穴といわれるものや、南蛮ガメは、今でもあるということです。