昔とても欲の深い役人がいました。この役人は、王府から言いつかった貢物の他に、自分の財産を増やすために、漁師や百姓にとても重い税を言いつけて自分の屋敷の中の倉にため込んでいました。たまりかねた村々の人が、この役人のところに来て話し合いをしましたが、役人はいっこうに聞く耳を持ちません。それどころかもっと税を増やすとおどかしました。そこへひとりの村人がやってきて、自分が持てるだけでもいい、村人に戻してやってくれないかと役人に頼みました。役人はその村人を見て「この男がひとりで持てるといってもせいぜい米2袋くらいだろう」と思い、「よし、お前が一度に持てるだけのものを持たせてやろう」と、この村人の申し出を受けました。
その村人は「それはよかった。それではいただいていきます」といって役人の倉の床下に入っていくと、「うーん」と手足をふんばりました。するとどうでしょう。倉がぐらぐらと揺れだして、とうとう柱が地面からはなれたではありませんか。
村人はそのまま倉を両腕で差しあげると、ゆうゆうと歩き出してとうとう自分の村まで持って帰ってしまったそうです。役人はもうこんなにおそろしいところにいるのはあぶないと思い、さっさと島から逃げ出してしまいました。