昔、首里の王に仕える男がいました。ある日、釣りをしていて、草むらにひとつのしゃれこうべを見つけてあわれに思い、それを洗骨してていねいに葬ってやりました。
またある日、王から「今日中に手紙を山原の親方に届けてくれ、国の大事にかかわることだから死ぬ気で走れ」といいつけられました。でも首里から山原まではどう考えても一日で走りぬけるのは無理です。
男はもうこれは死ぬしかないと考えていました。そこへひとりの男が現れて、「私に任せなさい。きっと今日の夕方までにはあなたを山原までつれていってあげます」といい、男を自分の背にのせると、「あなたはじっと目をつぶっていて、私の背から決して手をはなさないでいてください」と言いました。
男がその通りにすると、なんだか急にからだが空中に持ち上げられ、びゅうびゅうと風を切って飛んでいくようでした。
「さあ、着きましたよ。もう目をあけてもいいですよ」と言われて目をあけてみると、男はもう山原の親方の屋敷の前に立っていました。こうして男は王の大事をはたすことができて、国を救うことができたのです。
あの不思議な男はもうどこにもいませんでした。