化け猫と鉄砲玉

 昔々、ある山の中に、狩りをして暮らしている兄弟がいました。
 ある日、兄の方が病気になったので、弟がひとりで狩りに出ることになりました。持っていく鉄砲玉は、いつでも五つと決まっていました。それを用意しておくと、一匹の年老いた猫がこっそりと家の中に入ってきて、何気ないふりをしてその鉄砲玉を数え、またそっと家の裏に出ていきました。
 兄弟はそれに気がつき、「なぁ、猫は年をとると化けるという。今日はもうひとつだけたくさん鉄砲玉を持っていこう」と話し合いました。
 弟が山に入ってしばらくすると、目の前を大きな生きものがサーッと走りました。弟はその生きものがイノシシだと思って「ダーン」と鉄砲を放ちました。その度にその生きものはヒョイと身をかわして、弟はとうとう五つの鉄砲玉を使いはたしてしまいました。すると、あの生きものが急に木の陰から姿を現しました。それは、あの年老いた猫の化け物で、今にも弟をかみ殺そうと大きな爪のある足をふりかざし大きな牙のある口をあけて弟に向かってきました。
 弟はかくしていた六つ目の鉄砲玉を鉄砲に込めると、「ダーン」と猫の口をめがけて放ちました。
 こんなことがあってから、猟師たちは、いつでも一つだけ余分な鉄砲玉を持って猟に出るようになったそうですよ。

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