―八重山ではね、家を建てるときに『天官賜福紫微鑾駕』と書くといいますけれども、この家ではやりましたか。
うちはみんなやっています。この家も。また、畜産が好きだからよう、牛古屋にもよう、みんな『天官賜福紫微鑾駕』っていってよう、書いてやっております。
八重山民話「天官賜福紫微鑾駕」 これはねぇ、昔話によ、わたしが聞いた話ではねぇ、天からよ、使いがよ、使いがあったんでしょうね、女のよ。偉い人がね、いらっしゃってよ、川を渡っていこうとするときによ、川が深くてね、わたれなかったらしい。
それでよ、立っているところによ、男がね、来てよ、女のとこに。女がね、ここで待っているし、
「じゃああんた、なにか・・・あれがありますか」
とおっしゃったらよう、
「自分は神様から使われて来たんだがよう、この川を渡ってよう、この部落に行ってよう、行こうかと思っているんだがよう、この川が深くて渡れんのでよう、橋もないし、こんなになにか、海とのかかわりなのか、干潮時には渡れるかと思っておる」って言ったんで、
「それじゃあね、わたくしがおんぶしてよ、渡してあげよう」
って、男は裸になってよう、上によ、この女の人を乗せてよ、渡してあげたらしいよ。
そうしたところが、女がね、
「ほんとうにありがとうございました。わたくしはね、実はね、いろいろな家の災難のためにね、使われてきたんだがよ、あなたはこのわたくしを渡してくれた、この恩返しによう、あなたが家を造られたらね、必ず『天官賜福紫微鑾駕』という字を書いてね、家をね宅造しなさい」ということでよ、おっしゃったらしい。
「それでねぇ『天官賜福紫微鑾駕』と書いたらねぇ、この家は火事にもあわない、魔除けの一つでもあるからよ、必ず家を建てるときにはよ、『天官賜福紫微鑾駕』という字を書いてね、やりなさいよ」って。
「はい、わかりました」って言ってよう。
そいでね、やってね、家を造ってね、こう書いてね、やったところが、非常に繁栄してね、子宝にも恵まれて非常に徳をかってね篤農家になったという話を聞いております。