昔、竹富島の仲筋村の島仲という家に、兄はミドブチ、妹はアレパシという兄妹がいました。ある日、二人はプサシの浜に行って水遊びをしていると、半月形のものが海に浮かんでいるのを見つけました。ミドブチはそれを手にとってつくづくと眺めていましたが、何かを思いついて林の中に入って、一本の木を切り出して来ると、その半月形のものに似たものを作りはじめました。
最初にミドブチが作ったものに、妹のアレパシが「ウツムイ」と名前を付けました。ウツムイとは頭をさげるということで、兄の作ったものは片方を水の中につっこんでうまく浮きませんでした。
二つ目のものには「イスバレ」という名をつけました。今度はすぐに浜辺に乗りあげてしまいます。
三つ目に作ったものには「トビタイ」という名をつけました。今度はすいすいと波にのって浮かびましたが、どんどん沖に出て行って、とうとう黒島のアナドマルという浜まで行ってしまいました。
ミドブチは、また四つ目を作りました。今度は「島ムイ、フンムイ、五包、七包、カリユシ」という名にしました。
これが八重山の舟のはじまりのお話です。その後、黒島の人たちがミドブチの作った「トビタイ」をまねて、人の乗れる大きな舟を作りました。ミドブチはそれを見てとても誇らしく思いました。