黒島に「モーイ」と呼ばれる男がいました。そろそろ嫁さんを迎える年になり、家を建てるための木を切るために、西表島に行くことになり、海に出て間もなく、急に天気が変わって大嵐になり、モーイの舟も大波にさらわれて、どんどん流され、遠い見知らぬ無人島に流れつきました。
モーイは毎日、山に入って木の実や動物をとり、海に出て貝や魚をとって暮らしていました。その日も海に出て貝をとっていると、一匹のフカが寄って来て、モーイのまわりを泳ぎはじめ、いかにも自分の背に乗れといっているようでした。
モーイがその背に乗ると、フカはすごい速さで沖に泳ぎ出しました。
2日か3日か、モーイは遠くに島かげを見つけました。近づくにつれて、よくよく見るとそれは、自分の生まれた黒島だとわかりました。
昔むかしには、人間と生き物たちのこんな不思議な話が沢山ありました。