ある日、一人の男が山に木を切りに入りました。家を建てるのに良い材料になりそうな木を探して、山の中をあちこち歩きまわっていると、どこからともシクシクと泣く人の声が聞こえてきました。男は山に慣れない人が山に入り込んで道に迷ってしまい、途方にくれて泣いているのではと思ってあちこち探しましたが、どれだけ探しても人の姿が見えません。もしかしたら山の崖からでも落ちているのかも知れないと、谷底まで探したのですが、どこにも人影はありません。男はじっと耳をすませて、声の方角を確かめようと立ち止まりますと、どうもその泣き声は木の上の方から聞こえてくるようなのです。男は木の枝の間をすかして見ますと、近くの大きな木の上の枝の先にしゃれこうべがひっかかっていて、どうやら泣き声はそこから聞こえてくるようでした。
男はどうしてそんなところにしゃれこうべがあるのか不思議に思ったのですが、それを家に持ち帰って洗骨をして、立派なお墓をつくってあらためて葬ってやりました。それから後は、男の山には立派な木がたくさん育ち、男のところには家や道具の注文がたくさんくるようになり、たくさんの使用人を頼むほどに繁盛したということです。