夜、赤ん坊がくしゃみをします。
「くしゅん」
するとオバァーが小さな声で「クスクェー」といいます。
「くしゅん」……「クスクェー」。
それにはこんな話があります。
ある日の夕方、ひとりのお百姓さんが畑からの帰りにお墓の近くを通りかかると、そこからなんだかボソボソと話し声が聞こえてきました。なんだろうとそっと近づいて耳をすませてよく聞いてみると、「そうだ、赤ん坊がクシャミをしたら、すかさずお前がなく。それを三回続ければ、お前はその赤ん坊から一年間寿命をもらえる。わかったか」。
「ハイ、よくわりました」。
「あー、それから、お前がないた時、誰かが“クスクェー”というおまじないをとなえて、それが三回続いたら、お前はもうあきらめるしかしょうがない」というのでした。
そのお百姓さんは、ちょうど隣の家で赤ん坊が産まれたばかりなのを思い出して、急いで帰り、今見聞きしたことを隣の人に教えてあげました。
それからは、産まれたばかりの赤ん坊のいる家では、夜、赤ん坊がクシャミをして、その時猫の声を聞いたら「クスクェー」というようになったそうです。