アイスクリームがまな板の上で生まれてくるとは、一般人には何のことかよくわからない。調理やデザートなどに詳しい人には、「ははん」とくる。チョコを様々に飾り細工する際に、大理石のまな板は普通に使われるらしい。いわば、高級デザート用の調理器具である。
石垣島のゆいロード沿いの元・高良靴店の近くに、「ハウ トゥリー ジェラード」なるアイスクリーム店がある。
かつては、ジャージー牛の生乳を活用したソフトクリームが売られていた場所。今は、アイスクリーム店だ。
「ハウ トゥリー」とは、「ゆうな」のこと。オーナー夫妻の長女の名からの命名。そんなアットホームな店の看板をよく見れば「大理石アイス」とある。
この店に入って、カウンター内を覗けば大理石製のまな板が見える。これでつくられるアイスクリームがこの店の特徴だ。
急速冷凍でカチカチになる環境で、食材をただ凍らせて調理するのでは、おいしいものにはならないらしい。冷やす機械が大理石を通じて伝える冷たさ。アイスクリームやシャーベットがほどよい硬さを保ってくれるのが大理石まな板で、ジュースを垂らせばシャーベットが生まれ、アイスクリームを乗せて、小さく切ったフルーツをアイスに絡ませ、シャーベットも絡ませる。
すると器の上に、ソフトクリームのように立ち上がるアイスができあがる。フルーツの色と乳白色のアイスクリームを地に、シャーベットの色も混ざり、複雑な造形を生み出している。溶ければ消えるはかないちょっとしたアイスクリーム芸術に見える。
アメリカで流行っているとのことで、チェーン店が国内でも展開しており、沖縄本島にも一店ある。
ただ、石垣島のこの店はチェーン店ではない。八重山が大好きな北海道出身の武田さん夫妻が経営する。
石垣島で育つジャージー牛の濃厚乳のアイスクリームに、生ジュースのシャーベットと島のパイン、パッションフルーツ、パパイヤが入る石垣島のフルーツミックス(650~700円)がおすすめ。
八重山で大理石といえば、小浜島の大理石の一種トラバーチン。調理用になるか否かは不明だが、そういう使われ方が、将来あっていい。何しろここは石垣島だ、石を使う筋があるというもの。