5月20日正午、名蔵の仲松商店前でリュウキュウツミがスズメをねらって、じっとしているのが見られた。オスのリュウキュウツミで、メスのサイズからすると同じ種とは思えない小さな体で、スズメが周囲に現れても威圧するでなく、スズメが逆に様子を見るために近づくほど余裕を見せるほど。しかし、彼はスズメの様子を遠くからしっかり時間をかけて観察。しばらくして、ターゲットを決めると、スズメが巣に利用している穴を見極めて、その穴のそばへ移動。そこでじっと動かない。目はその穴から離れず、頭をかしげた」ままで、ちょっと変な格好だ。人が近寄ってもまったく無視。リュウキュウツミが人の接近に気づいても逃げないときは、何か起こる兆候と見ていい。ターゲットにねらいを絞って、チャンスを待っているときだからだ。かくして、事態は一瞬のことだった。スズメが穴から顔を出すや否や、ツミの餌食となった。穴からつがいのスズメなのか、襲われたスズメを助ける気なのか、ツミと同じ方角へ追いかけるように飛び出した。ツミは気の影に隠れて食事だ。そのあと、電柱の頂点へ獲物を持って移動して、また食べた。明るいところできれいに食べるつもりなのか。かくして、北へ飛び去ったリュウキュウツミ。小さき狩人は、鋭い観察と粘り強い行動。そして一瞬を見逃さない俊敏さで生きている。目の前で様子をうかがうスズメには目もくれず、待ち続けてものにする。生態系の頂点にあるとされる猛禽類のカンムリワシが、こんな血みどろの狩を見せたことがあるだろうか。そうしなくても獲物がある彼らだから、そのたくましさがなくなっているのかも。山深く自然豊かな石垣島と西表島に生息するカンムリワシだが、小さな野鳥や雛をねらう残酷なツミが、その小さい体というハンデを、観察力と粘りを武器にたくましく生きている姿は、注目に値する。