3月17日午後2時から石垣市新川のリラックスダイブBANANAでオニヒトデセミナーが開催された。この日、オニヒトデを独自に研究する辻維周(つじまさちか)氏が講師となり、3名の受講者がセミナーを受けていた。辻氏は東京コミュニケーションアート専門学校講師で、かつ代々木ゼミナール講師ながら、辻文化環境研究所を立ち上げ、独自に海洋生物の研究や八重山の信仰史を研究。なかでもオニヒトデに関しては、水温25度以上でのオニヒトデ駆除は、かえって産卵を誘発して増殖につながるとする考えの持ち主。この日も、辻氏の持論を披露してもっか漁業関係者やダイビング関係者が実施する駆除がオニヒトデの大発生を招いたと駆除を疑問視。「駆除したくなる心情はわかり、駆除するなとは言わないが、生態をもっと研究して取り組んでほしい」と述べていた。一方、この辻氏の論に疑問を投げかける人は多く、八重山ダイビング協会環境対策委員でダイブクリエイトを経営する佐伯信雄氏は、琉球大理学部教授山口正士の論部にある一節「オニヒトデをトングではさんだりして傷つけると、腕の付け根あたりからブドウの房のような卵巣や精巣がこぼれ出てきます。その房の中に入っている 卵や精子は、特殊な細胞の層に包まれていて未熟な状態ですので、そのままでは受精できません。仮に細胞層がやぶれて受精しても、大多数は正常に成長せず死滅します。このような生理的な卵成熟のメカニズムは、ヒトデ類全般に共通しています明確にオニヒトデの卵が海中に出るだけで受精はできず、・・・」を紹介して、ダイビング協会が取り組むオニヒトデ駆除の方法に誤りはないことを述べている。一般的には駆除の際の卵の漏れは増殖につながらないとされているが、見てくれの悪いオニヒトデがその存在を否定されるかによってたかって全滅をねらって人が駆除することが可哀想に思える人にとっては、辻氏の論は的を得て聞こえてくるのかも。辻氏は、オニヒトデの研究のきっかけも紹介。恐ろしいトゲと毒を持つヒトデであれば、海で何かの役割を持っているに違いないと思ったと述べていた。オニヒトデはサポニン成分を持ち、石けんをつくろうと思えばできると述べるほか、最近、オニヒトデを養殖魚の水槽の中に入れておくと、健康な養殖魚になることがわかり、やにわにオニヒトデが水産関係から注目されていると、オニヒトデの有用性にも触れ、謎が多い生物であることも紹介していた。