我先に鳴くからか、近いセミ同士が一斉に「ジー」と、夏を告げる声をイワサキクサゼミは雑木林に響かせ、鳴き声はまたたくまに石垣島の畑や原野へ広がります。 このセミの命名者の故岩崎卓爾は28才から68才まで、人生の大半を八重山で過ごし、八重山の自然と島人の人情を愛し、台風と格闘しました。このイワサキクサゼミの初鳴きを聞く度に岩崎卓爾の名が思い出されます。 3月下旬の太陽は、手のひらを上に向けると、日差しが手に当たる感触がぐんと伝わります。夏本番の入り口に達して、まさに生命が告げる夏の声です。 昨年の初鳴きは3月28日。ぴったりこの時期に鳴き出す彼らは、新暦の太陽の傾きにあわせるかのようです。今年は4月6日に台風1号が発生。7日にはウエーク島で低気圧になりましたが、地球温暖化で気候変動が感じられる昨今、これからどんな台風発生も見逃せません。