八重山10大ニュース 2015年(平成27年)
目次
2015年は与那国島に続き、石垣島でも自衛隊配備計画が具体化。同町では自衛隊配備、竹富町と石垣市では新庁舎建設をめぐり、建設位置を問う住民投票を実施、あるいは予定されている。いずれの問題も島の将来を左右する大きな出来事。与那国島を襲った台風21号は今も大きな爪痕を残している。一方、八重山高校野球部が春の選抜大会で21世紀枠に残るなど明るい話題も。10大ニュースを通して2015年を振り返る。
1.陸自配備めぐり賛否激化
戦後70年の節目を迎え、自衛隊の海外派遣を可能とする安保法制が成立するなど、自衛隊をめぐる社会情勢が大きく変化した。郡内でも与那国町で2月に陸自沿岸監視部隊配備の是非を問う住民投票があり、賛成多数で自衛隊配備賛成の意思が示され、駐屯地整備が進められている。石垣市では5月に左藤章防衛副大臣が来島。陸自警備部隊の配備に向けた駐屯地の候補地調査を打診し、中山義隆石垣市長は調査を受け入れた。11月には若宮健嗣防衛副大臣が開南地区西側に500~600人規模の地対空・地対艦ミサイル部隊と警備部隊の配備計画を中山市長に提示=写真。市民から賛否の声が上がっており、配備をめぐる議論が活発化しそうだ。
2.3市町“新庁舎建設元年”
庁舎の老朽化に伴い、3市町は新庁舎建設に向けて動きだした。竹富町では、11月29日に実施した住民投票で「西表大原」が「石垣市内」を319票上回り、移転先を大原へ決めた=写真。今後は町議会、川満栄長町長が住民投票の結果をどう判断するのか注目される。石垣市では、新庁舎の建設位置を市新庁舎建設基本計画策定委員会が投票で「現地」と決めたが、12月定例議会で議員提案された住民投票条例を可決。2016年2月上旬をめどに「現地」か「旧空港跡地」の二者択一で、投票が実施される見通し。与那国町では、12月8日の第2回庁舎建設検討委員会で、5候補地の中から祖納地区の高台に移転する方向性を確認。2016年3月までに答申する予定。
3.観測史上4位の台風襲来 与那国
8月23日から24日早朝にかけて石垣島地方に接近した台風15号は石垣島地方気象台の観測史上最大の最大瞬間風速71.0メートルを観測、9月28日に与那国島地方を襲った台風21号は全国の観測史上4番目の最大瞬間風速81.1メートルを記録した。台風は島々に大きな爪痕を残し、与那国島では災害救助法が適用された=写真。与那国では4月、1時間の最大降水量が島内の観測史上最高の130.5ミリを観測し、田原川が氾濫するなど、災害に見舞われた一年だった。与那国の台風21号被害では、災害救助法の対象外となる一部損壊世帯にも、赤瓦屋根などの場合に全部を取り換えなければならないケースがあり、法制度の不備を指摘する声も上がった。
4.旧空港跡地利用に遅れ
南ぬ島石垣空港の開港から3年目が経過し、将来のまちづくりに大きなインパクトを与える旧空港跡地の開発が注目されている=写真。跡地返還に向けて県が原状回復工事を実施する中、17年度の開院を予定している県立八重山病院は建築工事の入札不調が相次ぎ、開院の遅れも懸念されている。跡地では不発弾が相次いで見つかり、県は病院建設予定地周辺で磁気探査を実施。県道石垣空港線(アクセス道路)は19年度末までの工事完了を予定している。また、石垣市は土地区画整理事業の導入を検討しており、2016年度中に土地利用計画の策定。環境アセスや基本設計、都市計画決定などの手続きを19年度までに行い、21年度の着工を見込んでいる。
5.ユニマットがゴルフ場計画
ユニマットグループの㈱ユニマットプレシャス(高橋洋二代表取締役)が10月20日、前勢岳北側の社有地約99ヘクタールでゴルフ場を開発すると発表した=写真。石垣島では南ぬ島石垣空港の建設に伴って18ホールのゴルフ場がなくなり、観光振興などの面から必要性が叫ばれていた。同社は4年後の19年の開業を目指すとし、石垣市も市有地の貸し付け、個別法のクリアなどで協力する考えを示している。一方、同地は第一種農地で、農地転用などのハードルがある。さらにラムサール条約に登録されている名蔵アンパルが近くにあるため、アンパルの自然を守る会がゴルフ場開発の撤回を要請。今後、開発と保護の問題がクローズアップされる。
6.八重高、選抜出場へあと一歩
八重山高校野球部が快進撃を見せ、2016年春の第88回選抜大会出場へあと一歩まで迫った=写真。8月の第42回県高校野球新人大会を初制覇、勢いそのままに第65回県高校野球秋季大会で初の頂点に。決勝では夏の甲子園出場校、興南高を下しての優勝だった。4強入りでセンバツ出場が濃厚となる九州大会では、準々決勝で秀岳館(熊本)に1-8で敗れ、自力での甲子園出場は逃した。だが、21世紀枠候補校として、県、九州地区高野連から推薦されており、2016年1月29日の最終選考会で出場の可否が決定する。一方、石垣中野球部も第7回全日本少年春季軟式野球大会で県制覇、九州大会で5位に入り、2016年3月の全国大会出場を決めた。
7.教師が飲酒運転死亡事故
2月28日、石垣市新川の市道で酒を飲んで車を運転した市内の小学校教諭(47)が飲食店従業員の男性(27)をはねて死亡させる事故が発生。教諭は懲役6年6カ月の実刑判決を受けた。県と市教育委員会は郡内の小中学校長を対象に緊急会議を開き、再発防止策を決定。教職員の綱紀粛正と服務規律の徹底を再確認した。事故は世間に衝撃を与え、あらためて飲酒について考える機会に。一方、4月に市内の中学3年生の男子生徒が同級生と飲酒後に車を運転し、飲酒と無免許運転で逮捕。9月には市内の会社員の男性(32)が飲酒運転で車両4台を巻き込む事故を起こしており、飲酒絡みの事故は後を絶たない=写真。市民一人一人の意識が問われている。
8.ヤマネコ保護へ機運高まる 発見50年
竹富町西表島で国の特別天然記念物イリオモテヤマネコが発見されてから2015年で50年の節目を迎えた。町は記念事業実行委員会を発足し、当時、全国紙でヤマネコが新種・新属と報道された4月15日を「イリオモテヤマネコの日」に制定。シンポジウムの開催やツシマヤマネコが生息する対馬市との「ヤマネコ愛ランド共同宣言」の採択などを行い、自然環境保全への機運が高まった=写真。その一方で、西表上原では9月に特定外来生物のシロアゴガエルのオス2匹が初めて捕獲された。10月にはオス4匹が捕獲され、卵塊も確認された。在来種とのエサの競合や新たな寄生虫の感染など、島の生態系や在来生物への影響が懸念されている。
9.格安航空撤退、観光に打撃
第3の航空会社として航空運賃の低価格化に貢献したスカイマークは3月、就航から1年8カ月余で撤退した。ソラシドエアが新規参入したが、以前の低価格には戻らず、利用客の負担増と観光入域への打撃となった。観光客と人口増加が著しい石垣市場を狙い、市街地東側エリアを中心に県内外の企業が相次いで進出。価格競争やネームバリューに押された島内事業者は苦境に立たされた。美崎町では複合型商業施設が着工。経済活動が活発化した=写真。12月1日に予定されていた波照間空港再開は、就航する第一航空機の粟国空港での事故で、白紙となった。畜産は子牛価格が上昇。年平均価格は八重山、黒島とも約60万円の過去最高を記録した。
10.新城幸也、リオ五輪へ照準
6度目のツール・ド・フランス出場を逃した新城幸也(チームヨーロッパカー)だが、9月にブエルタ・ア・エスパーニャを完走。世界の3大グランツールを日本人で初めて走破し、日本の歴史に新たな一ページをつくった。来季はリオデジャネイロ五輪出場を見据え、イタリアの「ランプレ・メリダ」への移籍を決めた=写真。新城雄大(那須ブラーゼン)は今季、国内最高峰のJプロツアーでU-23の個人総合優勝。来季は、欧州レースに参戦する「EQADS(エカーズ)」へ移籍する。新城銀二(八重高3年)の那須ブラーゼン入りも決まった。ロッテの大嶺祐太は先発の一翼として活躍。キャリアハイの8勝を挙げ、来季の年棒も2倍に跳ね上がった。
提供:八重山毎日新聞社