野底の栄集落を奥まで入っていくと、森に囲まれた木造の建物が見えてくる。漆の器でイタリアンが楽しめる『Forestale Uno(フォレスターレ ウーノ)』。お店の2階は漆作品のギャラリーになっており、建物の奥は家主の宇野さん夫婦の自宅になっている。
宇野竜人、里依子さん夫婦はふたりとも関東出身。今から12年前に石垣島で出会ったが、いつか石垣島でお店を開くことを夢に、一度は島を離れたという。竜人さんはフレンチ・イタリアンのお店へ修行に、里依子さんは漆の道に進み、それぞれ技術を習得。その後、今年8月に野底の栄集落に念願だったお店をオープンさせた。
「市内でお店を始めることも考えたのですが、自分たちの住みたい場所で暮らしながら、レストランを始めたかったんです」。
土地探しを始めてから、海の近くや見晴らしのいい場所など候補はいくつもあったが、実際に見てみるとどれもイメージとは違った。不動産会社の紹介で今の土地を見にいってみると、そこには大きなガジュマルがあり、ふたりのイメージにぴったりだったという。「家づくりにおいて大切にしたことは、どうすれば森と一体化できるかということでした。そのため工事が始まっても、もともとあった木々はできるだけ残すことにしたんです」。
施工を担当した伊計組の伊計一徳さんとは、柱や壁、ドアの取手にいたる細かいことまで時間をかけて話し合ったという。伊計さんによると、宇野さんの家は店舗も兼ねてあるため、できるだけインパクトがある建物にしたかったそうだ。「自分たちが手掛けた建物なのでお店が成功してほしいし、なにより応援してあげたいじゃないですか」と伊計さん。
宇野さん夫婦に、今後の展望を聞いてみた。
「お店には観光客にも来てほしいのですが、地元の人にこそ愛されるお店にしていきたいですね。そして漆とイタリアンの魅力を、ひとりでも多くの人に知ってもらえたら嬉しいです」。