魚にとって干潮になったら干上がってしまうアンパル湿地は、決して住みやすい場所とはいえませんが、小さな魚(稚魚)にとっては隠れる場所や餌があり住むには良い場所なのかもしれません。この稚魚や蟹などをねらって大きな魚が満ち潮にのりやってきて、引き潮とともに海へ戻る移動を繰り返しています。今回はそのような魚を紹介したいと思います。
オニヒラアジ(写真1)
日本の南の海域に見られるアジ科の一種で、珊瑚礁沿岸域に生息するが、幼魚期には内湾や汽水域に入ってくる。アンパルでは手のひら大の大きさのものが多く見られる。
成長すると全長60㎝になる。釣りの対象魚として釣獲される。ルアーフィッシングの対象としても名前が知られている。幼魚はロウニンアジと似ており混同される。食用としても美味である。
ホシミゾイサキ(写真2)
体色は銀白色で体側の背側に鱗列に沿って縦列状に並ぶ暗色斑がある。背鰭にも黒斑がある。沖縄以南の珊瑚礁海域の砂泥底に生息するが、幼魚期には河川の流入する汽水域にも入ってくる。アンパルでは全長数㎝から30㎝前後までのものが多く見られる。甲殻類や多毛類などを主に捕食する。
沖縄以南の海域に見られ、釣りなどで漁獲され、釣り上げるとグーグーと鳴く。食べても美味しいが漁獲量はあまり多くない。成長すると全長50㎝ぐらいになる。
ミナミクロダイ(写真3)
鹿児島以北に生息するクロダイに似るが別種と区別される。本種は奄美群島、沖縄諸島に生息する固有種に分類される。内湾や河口域の砂泥や岩礁域等広い範囲に生息する。
アンパルにも満潮時にマングローブ林の中まで入ってきて甲殻類、多毛類、魚類、軟体動物、海藻など幅広い食性を示す雑食性である。体色は黒っぽいいぶし銀色で、体側に黒い横帯が現れることがある。食用魚としても美味で市場価値も高い。体型や体色が似ていることからホシミゾイサキ(イサキ科)と混同されるがタイ科の魚類で別種である。