13 そしてまた季節は巡る

ちょっと例年より寒い春を乗り越え、ようやくちらほらパイナップルも見えるようになりました。私が島の果実の無駄を何とかしたいと思って丸6年が過ぎ、7年目が始まります。そしてこれだけの月日が流れようとも、行政の姿勢はちっとも変っていないのがなにより残念です。今年から島に増設されたマンゴーハウスたちが本格収穫を迎えます。なんとなく豊作のうわさもちらほら聞こえるなか、私はその噂がちょっと恐ろしかったりします。
 西表島の果実の販路はちょっと特殊です。農家直売の比率が他の地域よりも圧倒的に高いのです。いち早く関係団体の柵を抜け、自社の顧客確保に努力した結果でもあります。通常のルートで行けばkg単価100円ちょっとが良いところですが、直売なので300円以上はキープしています。マンゴーもそう。よっぽど豊作でない限りは値崩れしないのです。加工業を営む私にとっては不作だと冷や汗もので、「西表島産」から「沖縄県産」に切り替えなければ商品原価とのバランスがとれません。ある意味勝ち組になりつつある西表島の果樹生産者ですが、やはり豊作時の対策ができていないのは今も昔も変わりません。
 私が加工業を始めた当初、自分の9坪の加工場では限界を感じ行政に町立の共同加工場の支援をいただけないか提案したことがありましたが門前払いでした。地道に自分の小さな工場で一次加工品と最終加工品を製造販売し、昨年から大手菓子メーカーにも西表島産の冷凍パイナップルが取り扱われるようになりました。小さな加工場でひたすらパイナップルを剥いてそれでも最終的には3トンほど、半分を菓子メーカーに引き渡しもう半分は自社で消化したのが昨年。本年はその4倍もの発注が来てしまい、今からもう冷や汗ものです。もちろん島産では足りないので今年は八重山や本島の市場からも買い付けます。そう、逆輸入です。なんだかなぁと思いながらも「おいしい!」って言ってくださるお客様と、「国産でこの値段でこのクオリティが欲しかったんだ」って言ってくださる業者さんをお断りするわけにはいかないのです。
 結論。やはりこれだけ青果が出る島には共同加工場が必要です。宮古島も昨年建設し本年より委託管理で民間が運営するようです。石垣島にも個人で設立の動きがあるようです。生産地に近い場所で加工場がある必要性を農家も行政も気づいてくれるときが来ることを切に願います。価格維持のための廃棄処分だけは避けられる夏になることを祈って…。

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