-きいやま商店さんは最近もとても忙しそうですが。
きいやま 各地のイベントに出たり、ワンマンライブなどをして八重山の宣伝をしながら全国をまわっています。今は新曲を制作中で、夏前くらいに発表できそうです。
-万智さんは現在石垣に住んでいらっしゃいますが、どのような経緯だったんですか?
万智さん 2011年の震災がきっかけで石垣島に来ました。当時仙台に住んでいて、余震もひどく、原発もどうなるかわからなくて、とりあえず離れようと思いました。その前の年に石垣に移住した友人の家に居候させてもらい、しばらく気晴らしできればというくらいの気持ちでした。でも息子が劇的に元気になっていって。海に行ってモズクを採ったり、近所の子どもたちと砂浜で遊んだり、むしろ、震災前よりも元気なくらい。それ以来好きで住んでいまaす。きっかけはたまたまだったけれど、もうすぐ3年になるので、住みついたのは偶然ではないなと思っています。
-きいやま商店との出会いは?
万智さん 最初にきいやま商店を見たのは、引っ越してきた年の9月に、近所の人に誘われていった川平小学校での満慶まつりでした。息子も、ライブが始まったら、一番前に飛び出していって首がちぎれるくらい踊ってました。私も一目惚れして。それから10月に名蔵公民館のライブに行って。
リョーサ 名蔵で初めて話したの覚えてる!
万智さん 11月には息子が誕生日で、「プレゼントなにがいい?」って言ったら、きいやま商店のライブにいきたいと。
きいやま 嬉しいねー。
万智さん 西表でライブがあったので、初めて西表に行きました。それから八重山内だけでなく、追っかけをしています。
-最近はサンサンラジオの番組、「きいやま商店のカッパチ!」で、万智さんもレギュラーですよね。
マスト すごいことだよなー。
万智さん 放送3、4回目の時にゲストで呼んでもらって、それ以来居座ってるっていう。最初スペシャルゲストだったのに、今はスペシャルでもゲストでもない(笑)。
リョーサ すごいことだよ!
万智さん 今は誰よりも早くスタジオにきて(リスナーの方から寄せられた)ハガキとか読んでるし。
大ちゃん 申し訳ない…。
万智さん いちファンとしてずっと見させてもらってて、仕事としては、3枚目の『ドゥマンギテ』でライナーノーツをご依頼いただいて。そのときに、『八重山アイランドワルツ』を作詞して、それが楽しくて、次に『がんば』を書かせてもらって。
マスト おれらは歌詞が苦手でね。(八重山アイランドワルツは)先に川畑アキラさんの曲があって。
リョーサ 万智さんに書いてもらいたいけど、とりあえず言ってみるだけ言ってみようかって。そしたら万智さんが二つ返事で「いいよ」って。
万智さん 自分で仕事するようになって20何年、ほとんど依頼される仕事なんだよね。書くのが好きでこの仕事にしたんだけど、気付いたら締切に追われていたり、書かなきゃってなってる。『がんば』に関してはほんとに誰からも頼まれてないのに、自分から久しぶりに何かを書きたくて書けた。その時間を持てたことも自分にとって収穫だった。そういう気持ちにさせてくれたきいやま商店にすごく感謝してます。
大ちゃん 嬉しい!
-JAL沖縄のCMソングにもなっていたし、今はJALグループの機内オーディオサービスでも流れていますね。
リョーサ・大ちゃん すごいよな!
万智さん 素晴らしい曲をつけて歌ってくれて、とても嬉しいです。
-万智さんは、島に住んでみて、暮らしや環境について感じることについて教えてください。
万智さん まずは圧倒的な自然ですね。仙台にいても自然に触れさせようと思うと、わざわざ出かけないといけないんですよね。子どもは遊んでなんぼって思ってるんだけど、子ども同士が無意味に遊ぶ時間ていうのがない。それを一番苦労してつくってました。こっちにきたら、みんな子どもが暇そうで。約束することなくわーわー遊んでる。仙台では、同級生の親に連絡して「来週の水曜日の何時から何時まであいてますか」とか、マネージャーみたいでした。
今の小学生っていうのは遊ぶのがこんなに大変なのかと思っていました。今石垣で住んでいるところは、町から少し離れていて、島の中でも昭和っぽさがあるのかも。地域の人が子どもをみんな呼び捨てにして、悪いことしたら近所のおじさんに怒られたり。東京と仙台で子育てをしていて足りないと思ったものがたまたま島にありました。
やっぱり子どもにとっての一番の教育環境って、自然と、子ども同士が遊べる事に尽きると思う。それが石垣にはあるから素晴らしい。地域がすごく仲が良くて、東京などで仕事ができるのは、その間地域の人が順番で子どもを預かってくれるから。それを東京の人に言うとすごくびっくりされて。「石垣でもシッターさんいるんですか?」とか聞かれますからね。
マスト ヘー!(驚)。そういうことなくても泊まり歩いてるよね。
大ちゃん 子どものころって友達の家に泊まりにいくのがめちゃくちゃ楽しかった。
リョーサ 帰されそうな気配がしたら、おれらは寝たふりしてた。「もう寝てるよー。起こさんでー」って雰囲気を出して、親が帰った瞬間に起きだして、「なにするかー!」って。
万智さん 近所の子たちも幼稚園児から中学生まで我が家に泊まりにきてるし、地域みんなで子どもをみるって環境が、特にうちなんて母子家庭だし、ひとりっこだからありがたい。兄弟姉妹みたいな違う年の子が仲良く遊んでるのがいいなと思う。
よく全国一斉のテストで、沖縄って、ぶっちぎりで最下位だったり、ブービー賞だったり。
一同爆笑
リョーサ ぶっちぎってる分、違うものを学んでると思う。
万智さん 子どもの時間割も、音楽の発表会が近いからってのもあるんだけど、午後は全部音楽だったりとか。運動会の時のエイサーとかすごい気合入ってるしね。
マスト 勉強ができないせいで劣等感とかはなかったかな。
大ちゃん そうだね。
万智さん そこが素晴らしいよね。もちろん勉強も生きていく上で必要な面もあるけれど、都会ではそれが100%になってるから気の毒に感じるというか…。
-きいやまの3人はいい子でしたか?
マスト おれとにーにーはいい子だった。大ちゃんは悪かった。しかも学校1の。
大ちゃん 小学生のかわいいいたずらだろ!ませガキだったな。
リョーサ 小学生だけで焼き肉食べ放題行ってたもんな!
-えー!! 何年生の時に?
大ちゃん 5年だな。600円で焼肉食べ放題だったからな。同級生だけで何回か行って、お店の人から学校に連絡が入って、「小学生だけ来てる」と。それでもう行かなくなった。
リョーサ 今考えたらないよなー!
-万智さんは、きいやまの3人をはじめ、島の方々についてどんな印象を持っていますか?
万智さん 音楽とともに育ったんだなと、日常のものとして音楽があるのがとても素敵だと思います。あと、すごく先祖を大事にするっていう感覚がとても自然にあるのがやっと最近腑に落ちるようになった。
はじめ、りょーさーが「(長男だから)仏壇をみんといけん」ていうのを普通にさらっと言ってたのがものすごくカルチャーショックで!
リョーサ え!
万智さん ほら、今も驚いてるでしょ! 島の人たちにとっては自然なことなんだよね。実際おじいちゃんおばあちゃんに会わせてもらったり、アンガマや行事とかいろいろ見て、先祖を大事に思う気持ちが生きてるのがほんとにわかる。
自分が今あるのは先祖のおかげっていう気持ちがあるのは、つまり、未来のことにも目がいってるっていう事ですよね。多分100年前の人をありがたく思える人は、100年後のことを考えられる人。
きいやまの歌でも、おじさんの歌とかばあちゃんの歌とかあるけど、J-popでなかなかないよ(笑)! すごい貴重ですごく素敵。
-最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
大ちゃん 『やいま』にはいつも載せてもらって、そしてそれを読んでくれてるみなさんも、いつも応援ありがとうございます。これからも『やいま』共々、よろしくお願いします!
マスト 最近八重山でのライブが少ないので、ホームでのライブを増やそうと思っています。ぜひあそびにきてね!
リョーサ いつも応援ありがとうございます。やっぱり僕らは島んちゅ。なかなか島に帰って来れないけど、帰ってきたら落ち着くし、ゆっくり寝れる。八重山をもっともっと全国に宣伝してきます。これからも『やいま』、『きいやま商店』をよろしくお願いします! それでは内地に行ってくるよー!
万智さん せっかく住んでいるので、八重山の自然を、どんどん短歌にしていきたいと思っています。きいやま商店のライブで見かけたら、声かけてください。
俵 万智
代表作に『サラダ記念日』などをもつ歌人。2011年より石垣島に住む。2013年11月に8年ぶりとなる歌集『オレがマリオ』を出版。石垣の暮らしなどについての歌も多数掲載。きいやま商店には『がんば』、『八重山アイランドワルツ』の2曲の詞を提供。
きいやま商店
石垣島出身、在住、兄弟といとこのリョーサ(崎枝亮作)、だいちゃん(崎枝大樹)、マスト(崎枝将人)で2008年に結成されたエンタメユニット。沖縄を拠点に、全国でライブ活動をしている。現在沖縄県内で3つのテレビCMに楽曲提供、出演している。最新作は4thアルバム『ダックァーセ!』。