名蔵アンパルの動植物たちシリーズ(8)

名蔵アンパルの動植物たちシリーズ(8)
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モモタマナ

 沖縄では、「クバデーサ」、「クファデーシ」、「コハシキ」などと呼ばれ、シクシン科モモタマナ属に属し、ごく普通に見られる植物です。アジアからポリネシアの熱帯・亜熱帯の海岸に広く分布します。また、樹形が平頂な樹冠をなすため木陰を提供する緑化木としても利用され、街路樹、公園、学校などに植えられています。県営平和祈念公園、平和の礎にも設計段階で取り入れられました。
 果実は扁平な楕円形で3×5cm程、中果皮が繊維質やコルク質なため水に浮き易く、河を流れ下って海に流出したものが海辺でよく見られます。漂着種子としては、出会う頻度の高い種子です。
 名蔵湾では、名蔵大橋のすぐ北側の浜で、匍匐するグンバイヒルガオの少し上辺りに幼木が見られ、崎枝方面へ向かう護岸沿いの海側にも、テトラポットの隙間から生えたモモタマナが見られます(写真1、2)。これらは漂着種子が発芽し成長したものでしょう。このように海岸に漂着した種子が、やがて時間をかけて海岸林を構成していくのですが、実際は、発芽、成長して、他の植物たちと共に林や森を作るには、様々な条件を必要としたり、競争、選択が起こります。「木を見て森を見ず」のことわざどおり、もっと視野を広げて観察する必要があります。では、アンパルの砂州や島々の海岸林ではどうでしょうか。広く見て回ると意外とモモタマナの少ないことがわかります。むしろ、海岸林の中より、少し内陸部の開けた土地に自生していることに気づくでしょう。
 それでも海岸林にまったくないわけではありません。アンパル砂州の海辺に沿って、陸側を見ながら歩いていると樹高3m程のモモタマナを一本見つけました(写真3)。しかし、思いっきり枝を横に広げることができず、葉の色も悪く元気がないようです。他の木々が密生する海岸林の中では、あまり良い環境といえないようです。

深石 隆司

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