現在行政がアンパル関連で3件の事業=1・砂嘴のモクマオウ伐採事業、2・新アンパルガイドの作成、3・アンパル園地整備計画を進めています。モクマオウの伐採事業は石垣市に寄せられたふるさと納税によるもの、新アンパルガイドは国の沖縄一括交付金によるもの、アンパル園地整備計画は国・環境省の直括事業です。1と2の事業は本誌でもすでに紹介してありますが、具体的に事業が進行しています。(モクマオウ伐採事業は、初年度の予算だけでは一部のモクマオウの伐採しかできないので、次年度以降も継続した事業にする必要があります)。
環境省が「アンパル園地整備計画」の素案を提示しています。コンサルタント会社も決まっており、今年度中に調査、設計をして、早ければ来年度に着工予定のようです。現在提示されている素案は、環境省が買い上げた土地に、駐車場、トイレ、木道を設置するものです(図1 点線:木道、黄色部:トイレ、駐車場予定)。観光客が神田橋側から入ってマングローブの密林を観察する計画です。国によってアンパルにこのように具体的な園地整備計画が提示されたことは大いに歓迎すべきことです。しかし作る以上はよりよいものにしていかなければなりません。
環境省案を見ると、マングローブのジャングルツアーとしては面白いかもしれませんが、アンパルの一面しか見られません。予定された場所が名蔵川に近接しすぎており、名蔵湾、アンパル、名蔵川を行き来して生活している希少生物への影響が心配です。アンパルはラムサール条約登録湿地ですから「保全と賢明な利用」を義務づけられています。保全があって持続可能な賢明な利用がはじめて可能になります。しかし今回の整備計画には「保全」の機能が予定されていません。アンパルの保全のためにはアンパルの自然について観光客を含めて多くの人びとに知ってもらわなければなりません。そのためには木道は重要な役割を果たすでしょう。しかしもっと重要なことは、設置される施設がアンパルを保全するための機能・役割をしっかりと持つことです。ラムサール条約登録湿地である沖縄本島の漫湖にある「漫湖水鳥・湿地センター」のように大きくなくても良いですが、最低でも自然・環境教育、調査・研究を継続的にできて、アンパルを島の宝と思っている人々が交流できる場であるべきです。アンパルの保全をしていく市民が集い交流することこそ保全の第1歩です。そこからアンパルの自然を損なっている現実の諸問題、たとえば赤土流入問題、ゴミの不法投棄問題などを解決していく力が育ってきます。
私たちは園地整備計画の設置場所と施設の機能の両面から考えて環境省案がバランスの取れた案に改善されることを望みます。今後「アンパルの自然を守る会」としても積極的に提案しながら環境省と話し合っていくつもりです。