昨年の初秋に米原のヤエヤマヤシ群落内で遭遇したクワノハエノキ(ニレ科)です。胸高の幹周り3メートル30センチ、樹高約15メートルを超すスマートな巨木です。
さて、冒頭の群落は、国指定の天然記念物(1972年5月12日指定)です。また、指定の翌年には、いわゆる第1回緑の国勢調査でも「豊かな自然林」として登録されました。その後は、「特定植物群落」として追跡調査も実施されています。
同巨木は、ヤエヤマヤシが林立するポイントから東側に外れた山ろくの奥です。クワノハエノキにしては、珍しいスマートな樹形です。それは、密生した周辺の木々によって、吹きすさぶ北風や台風から守られた結果だと推測します。しかし、現在は先端部分が樹冠からはみ出し、これからは、周辺の木々を守らなければならないお返しが待っている同巨木です。
クワノハエノキは、御嶽の巨木を代表する樹種の一つでもあります。各地の御嶽には、同巨木をしのぐ巨樹があることも承知しています。今回、あえて取り上げたのは、亜熱帯原生林の中で遭遇したスマートな巨木として掲載しました。
ところで、一帯の主人公はもちろんヤエヤマヤシです。しかし、場所によってはオオクサボク(オシロイバナ科)、ギランイヌビワ(クワ科)、ムクイヌビワ(同科)の巨樹にも遭遇します。姿は見えないが、イワサキゼミの大合唱が響く同群落でした。