民宿の客人と宿主という出会いから気がつけば20年という月日が流れた。赤ん坊だった我が家の子どもたちの顔も見たいと言うことで、97歳になるおじいちゃんを訪ね昨年、山形へ家族で行った。
「おくりびと」のロケ地巡りや厚いもてなしを受け大満足の旅であった。北と南、死者に対する思いは共通するものがあると、映画「おくりびと」の話に花が咲く。山々の連なる風景、山に抱かれ暮らす光景に、ふとお盆に歌う念佛節の一節が浮かんできたのだ。「南無阿弥陀佛 阿弥陀佛」親の御恩は深きもの、父御の御恩は山高さ、母御の御恩は海深さ、親への思いを切々と歌い供養するこの唄は14番まである。非現実的なことを嫌う私の主人だが、お盆のこの時ばかりは仏壇を拝みながら汗を掻き掻き、誠実な姿勢で念佛を歌いお盆を送る。祖先の霊をまつるお盆は、死者の霊魂に向き合うことにより、生きている私たち自身の魂を入れ替える大切なときだと思う。
私たちは何時の世も親に生され、また親になり命を繋げていく。おくりびととなりおくられていくのだろう…。山寺で出合った言葉を胸に刻み供養の前に孝行したいと思う昨今である。