ハブが…

ハブが…

草刈り中の出来事

前号に引き続き、幼稚園教諭時代の話。
 その日の保育が終わり、子どもたちが帰ったあとの園庭。運動場を共有する小学校から草刈機を借り、農家のお嫁さんよろしく園舎の周りの草を刈っていました。しばらくして園の前を通りかかった園児の母親が「まあ、先生」と校門から入って来ました。農作業の帰りらしく、持っていた鎌を取り出すが早いか、手伝い始めました。昼下がりの園庭に、草の匂いに包まれた立ち姿と屈み姿二人の豊かな時間が流れていきます。
 そんな静寂ともいえる空気を破って、悲鳴。お母さんが片方の手を押さえながら、ハブに噛まれたと言うのです。仰天した私はすぐさまタクシーを呼びました。当時真栄里にあった八重山病院へ急がせながら、後部座席でお母さんの腕をタオルで縛りつけたままの姿勢で、祈るような気持ちでした。
 一段落して思い巡らせた時、園児のいる保育中で無かった事が不幸中の幸いだったと思わずにはいられませんでした。確かに新築なった園舎は、小学校の四隅の一角、小道を挟んで右側がパイン畑、向い側がサトウキビ畑です。明確な塀が無かったパイン畑の方からテキは侵入してきたに違いありません。
 当誌七月号登場のパイナップルおじぃのお二人さん、そんな出来事ご存知ないですよね。
○園児らの誕生日カードとパイナップル バッグに在りて終バスを待つ

大川 安子

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