アーマン、アマム、アマンツァ、アマンブ、アマンザ、アーミンチャーと、八重山各地で呼び方は少しずつ異なる。
陸に住むオカヤドカリは南方系で、沖縄には6種類(オカヤドカリ、ナキオカヤドカリ、オオナキオカヤドカリ、ムラサキオカヤドカリ、コムラサキオカヤドカリ)が生息する。海辺の林に暮らし、死魚や果実などに集まる雑食性で、浜の清掃屋といわれる。脱皮を繰り返して成長するにつれ、宿貝を変えていく。オカヤドカリをはじめ南の海に住むヤドカリは左のハサミが大きく左ききで、北に住むホンヤドカリの仲間は右に大きなハサミをもつ。
≪家を探して≫
オカヤドカリは新しい貝殻を見つけると、ハサミで大きさを測り、内側、外側の状態をよく調べ、気に入ると砂などを出してするりと移る。住み心地を確かめるまでは、古い貝殻を離さないそうだ。しかし、家は不足気味で、仲間同士で貝を取り合ってよく群がり、静かな浜では貝と貝の当たる音が聞こえる。体がはみ出す小さな貝には、オスまたは卵を持たないメスが入ることが多い。抱卵メスは、大きさ、重さ、形を慎重に見極め、選ぶ貝の種類にも傾向があるという。
≪ヤドカリの子、ゾエア≫
オスは生殖突起、メスは生殖孔を胸部に持つ。交接は貝から体を乗り出して向かい合う形で行われ、メスは腹肢に卵を付ける。約1ヶ月後、成熟卵を抱いたメスは毎年同じ浜に集まり、ほぼ同じ時刻 新月、満月の夕暮れどき に、海中に子ども(ゾエア幼生)を放つ。
ピークは6~8月。ゾエアは海を浮遊し、5回目の脱皮で親の形に近いグラウコトエ幼生になる。海岸にたどり着くともう1度脱皮し、3ミリほどのヤドカリが誕生する。泳ぐことはできなくなり、小さな貝を探して浜辺を歩き始める。
同じ科に属すヤシガニも幼生を海に放ち、グラウコトエ期には宿貝に入る。
≪アマンユー(海人世)≫
アマンは創世紀より生息するという伝説が白保にあり、アマンユーは太古を意味する。
島の始まりにアダンの木が生い茂り、その根元の穴からアマンが「カブリー」と言って地上に現れ、赤く熟れたアダンの実を食べて島々に繁殖した。ずっと後に同じ穴から美しい男女が「カブリー」と言って現れ、赤く熟れたアダンの実を食べた。アダンは生命の神木であり、ここから人間が始まった。
豊年祭のときにアダンの芽のスナイ(味噌あえ)を供えたり、盆祭りのときにアダンの実を供えたりする習俗は、人の生成を忘れないためだといわれる。
また、沖縄県内や奄美地方で、約100年前まで女性の手に施されていた入墨には、アマンと呼ばれる文様があった。それは奄美群島、久米島、宮古島、多良間島の女性の左手首(ちょうど骨が丸く出たところ)にあり、沖永良部島では「我々はアマムの子孫であるから」と伝えられていた。ヤドカリを先祖とする点で、八重山の伝説と共通する。