フランス、パリ郊外在住の画家、与座英信さんが10年ぶりに地元石垣島で個展をひらいた。会場のアトリエあおでお話を伺いました。
与座 英信(以下、与座)
絵そのものが国境を表現したというわけではなく、絵をかいた与座英信という男が、フランスで描き、国境を越えてやってきて、八重山という国境で展覧展を開くという事でこのテーマを付けました。この個展はフランスのバルビゾンと京都でも行いましたが、「国境」とタイトルをつけたのは、石垣でだけです。
今回の絵は目を閉じた女性ばかり。もし自分をみようとしたら、人は目を閉じるしかない。目をつむっている事は、なにも見ていないのではなく、すべてを見ようとしているのだと思う。今回はすべて女性の絵ですが、その時に一番描きたいものを描きます。景色を描く時もあれば、猫、花などと主題はいくらでもあります。
与座
子どもの頃から絵を描くのが好きで、小学校高学年のころ、琉米文化会館(現・石垣市文化会館)でたまたま世界美術全集を広げた。その時の喜び、こういう世界があるという衝撃は今でも覚えている。今考えれば、これがはじまりだったのかなと思う。イタリアルネッサンス時代のラファエロとかレオナルド・ダ・ヴィンチなど、ショックを受けた。それが今でも続いてるかもしれない。ぜひ、世界美術全集を子供が目にする事ができる環境にしてほしい。
与座
絵を描く事に、可能と不可能という境界線はない。これが成功であり、これが失敗であるという事はない。それを追求している間が自分が生きている意味を持つと思う。僕にとって描いている行為そのものが生きている事。くだらないかもしれないし素晴らしいかもしれない。それはわからない。でも、ただただ絵をかくのが好きだという、それ以外に言いようがない。
与座
石垣にアトリエをつくりたいと思っています。2、3年後には実現できるかなと思います。絵をかく場所をこの島で確保したいなと。1年のうち3ヶ月は石垣で、それ以外はパリとそのほかの場所でといったペースができないかなと考えているところです。
石垣島とフランスでは、気候はだいぶ違うし、鳥の鳴き声、風の吹き声、陽の照り具合、朝昼の様子、海鳴りなど、ここにしかないものがある。その中に知っている人間たちが生きた事のストーリーがある。それが帰ってきた時にほっとするという事だと思う。地球上に、自分が育った思い出が現実に残っているのはここだけだからね。
与座
若い人には、自分が興味を持ったもの、好きだと思う事は徹底して最後までやってほしい。それが最終的には幸せな生き方ではないかと思う。なにを幸せかというのは人それぞれだけど、僕の場合、絵をかいている事が一番幸せだった。
そして、いつも繰り返しているけど、僕がよその国で大手を振って歩けるのは、この島で頑張ってくれているみなさんがいるからです。島の人たちが生きる場所を守り、発展させ、日々努力し、この島で一生懸命生きているからこそです。それに対してありがとうと言いたい。
与座 英信与座 英信(よざ えいしん)プロフィール
1952年7月15日生まれ。石垣市登野城出身。フランスパリ郊外在住。八重高卒業後、71年に上京。新宿美術研究所でデッサンを学ぶ。役者としての活動も。79年から81年までアメリカに滞在。様々な仕事をし、米国内数ヶ所で暮らす。81年10月に渡欧。3ヶ月間ヨーロッパ放浪のあと、パリに定住。現在、絵を描きながら、ヨーロッパ各地、ニューヨークなどで個展を開く。