八重山民話

夜のガラサー

 昔ある村の巫女が、役人に呼び出されました。役人は巫女に「お前は人の弱みにつけ込んで、大枚の謝礼を要求し、困らせていると訴え出たものが何人もいる。お前は大悪人だ」と言って、牢に入れてしまいました。巫女がどんなに無実を ...

ウフナグヌ ウマリタンドゥ!!

 昔、沖縄の那覇に、とても悪賢い坊さんがいました。「自分は念力で人の病をなおしたり、災難をはらったりできるのだ」といって人々をだまして、うんと高いお金をだまし取っていました。そのやり方があまりにあくどいので、王様は「 ...

犬の見つけた井戸

 昔、竹富島の仲筋村の主で新志花重成(アラシハナカサナリ)という人が、日照りで村人達が困っている事にたいへん心を痛めて、どうしたらいいかと畑を見廻りながら考えていました。  その時に、自分が可愛がっている犬もいっしょ ...

舟のはじまり

 昔、竹富島の仲筋村の島仲という家に、兄はミドブチ、妹はアレパシという兄妹がいました。ある日、二人はプサシの浜に行って水遊びをしていると、半月形のものが海に浮かんでいるのを見つけました。ミドブチはそれを手にとってつく ...

星砂の由来

 これは、八重山の島々ができて間もない頃のお話。ある時、天の星の女神が星の子を産むことになり、どこか清らかな場所がないものかと、天の神様に相談しました。天の神様はあちこちと探しましたが、ちょうど今の竹富島の沖に、とて ...

米寿の由来

 ある村に、貧しい母と子だけの家がありました。子どもはまだ小さかったのですが、母親を手伝ってとてもよく働いていました。ところがその母親が病気になってしまい、畑にも出られなくなってしまいました。子どもはひとりで毎日畑に ...

フカに助けられた男

 黒島に「モーイ」と呼ばれる男がいました。そろそろ嫁さんを迎える年になり、家を建てるための木を切るために、西表島に行くことになり、海に出て間もなく、急に天気が変わって大嵐になり、モーイの舟も大波にさらわれて、どんどん ...

南蛮に通った娘

 昔、今の西銘という集落のある家に、とても美しい娘がいたそうです。ある時から、その集落の浜につないである船(サバニ)が夜になると誰かに持ち出されて、朝になるとまた戻してあるという事が度々あるようになりました。  サバ ...

倉ごともらう

 昔とても欲の深い役人がいました。この役人は、王府から言いつかった貢物の他に、自分の財産を増やすために、漁師や百姓にとても重い税を言いつけて自分の屋敷の中の倉にため込んでいました。たまりかねた村々の人が、この役人のと ...

小鳥の恩がえし

 ある風の強い日、ひとりの漁師が浜に出て海の様子をみていました。すると、なんだかとても悲しそうな鳥の声が聞こえてきました。なんだろうと声のほうに行ってみると、風に吹きとばされて、地面にたたきつけられて飛べなくなった小 ...

犬がみつけた井戸

 昔、沖縄の八重山では、ひどい干ばつでもう何ヶ月も雨が降らず、村にあった井戸もかれてしまい、人々がどんどん乾きのためにたおれていきました。  そんなある日、ある女が飼っている犬が全身水びたしになって帰って来ました。女 ...

蛇が守り神

 昔、ある村では、ネズミがたくさん増えて、倉や畑の作物を食い荒らしてたいへん困っていました。どの家も猫を飼ってネズミをとらせたのですが、とてもおいつきません。ところがある家の倉にだけは、ネズミが寄り付かないのです。み ...

蝿の手スリ足スリ

 昔、ある家で蝿とスズメが言い争いをしました。それは、大切なお米やご飯を神様におそなえする前に、どちらが先に食べたのかというのです。そこで、スズメと蝿は「これは、もう神様のところに行ってどちらが悪いのか聞いてみよう」 ...

泣くしゃれこうべ

 ある日、一人の男が山に木を切りに入りました。家を建てるのに良い材料になりそうな木を探して、山の中をあちこち歩きまわっていると、どこからともシクシクと泣く人の声が聞こえてきました。男は山に慣れない人が山に入り込んで道 ...

大蛇と娘

 ある年の夏、大切な畑の作物が、これからどんどんと育つはずの季節に、雨が一滴も降らないで、どんどん枯れていってしまいました。百姓たちは、遠くの山の中に大きな池があって、水をたっぷりためているのを知っていて、「ああ、あ ...

キジムナーの桑の木

 あるところに、とても欲の深い百姓がいました。この百姓は、こっそり、他人の土地との境を越えて、自分の畑のように作物を植え変えてしまったり、こっそりと他の人の鶏をとってきて自分の鶏小屋に入れてしまったりして少しずつ、自 ...

猿になった金持ち

 ある年の暮れ、ひとりのみすぼらしい姿の老人が、ある部落にやってきました。その老人は村のあちこちの家に行って少しばかりの食べ物を乞いましたが、どの家でも「明日は大切な正月の日だ」といって、その老人を追い払いました。と ...

美女に化けたブタ

 動物は年をとると、不思議な力を持つようになる、色々な不思議をするようになると言われています。  ある村に一頭のブタが飼われていました。もうずいぶんと年をとり、毎日ほとんど小屋の中で寝てばかりいるようになっていました ...

逆さオバケ

 あるところに、とても仲のわるい夫婦がいました。朝から晩までいがみ合っていました。  ある日、水汲みをしている女房に、口ぎたなくののしられて、たまらず女房の背をどんと突いて、井戸の中に落として、その上から石や土を放り ...

梅雨と夏

 梅雨の頃、降り続く雨に外で遊べない子どもたちにとっては、いちばんつまらない毎日です。子どもたちは家の軒下に立って天に向かって歌います。  あみんなま ふぃたぼり  こんちんなま はれたぼり  ぱなりぬ あっぱたや ...

竜宮の黄金

 昔、とても正直で、心やさしい漁師がいました。  この漁師は、その日に必要な分だけ漁をすると、他は、どんなにたくさん魚や貝がいても漁ろうとせず、朝晩決まって、海の神様にお祈りをすることを忘れませんでした。  その漁師 ...

空を飛んだ男

 昔、首里の王に仕える男がいました。ある日、釣りをしていて、草むらにひとつのしゃれこうべを見つけてあわれに思い、それを洗骨してていねいに葬ってやりました。  またある日、王から「今日中に手紙を山原の親方に届けてくれ、 ...

ねずみのくれた黄金

 あるところに、とても心のやさしいおばあさんがいました。ある日、子供たちにいじめられている一匹のねずみを助けてやりました。  それから、何日か後、そのねずみがひょっこりとおばあさんの前に現れて、「庭のすみに、この竹を ...

名医になった男

 昔、ある男が、深い山に入って木を切り出そうと出かけていきました。すると、深い繁みの中から、うんうんと苦しそうな声が聞こえてきました。男は、自分の他にも誰かが山に入って、急な腹痛でもおこしたか、大けがでもして苦しんで ...

ねずみがくれたひょうたんの種

 昔々、村の広場で子供たちが仔ねずみをつかまえていじめていました。そこへ、おばあさんが通りかかって、そのねずみを助けてやりました。それから何日か過ぎた日の夕方、一匹のねずみがそのあばあさんをたずねてきました。そして、 ...

アンガマ

 夏になると「ああ、アンガマーの季節だな」と思う。もう、今年はどこの家にアンガマが来るのか、みんな興味津々。 子どもたちも声をそろえて歌を唄う。 こんな童謡があります。 「そーりれーぬ あんがま」 そーりれーぬ あん ...

運のいい塩売り

 ある若い塩売りが一軒の大きな屋敷にやって来て、中に声をかけましたが、答えがありません。そこで家の側の穀物倉の方に廻ってみると、そこに弓矢が置いてありました。塩売りは「ほう、これが弓というものか」といって、矢をつがえ ...

黄金色のウリ

 ある王様の妃がふと気のゆるみから王様の前で、ぷっとおならをしてしまいました。「なんと無礼な女だ」と怒った王様はこの妃を城から追い出してしまいました。妃はまだ幼い王子をつれてある島に流されてしまいました。  王子は大 ...

化け猫と鉄砲玉

 昔々、ある山の中に、狩りをして暮らしている兄弟がいました。  ある日、兄の方が病気になったので、弟がひとりで狩りに出ることになりました。持っていく鉄砲玉は、いつでも五つと決まっていました。それを用意しておくと、一匹 ...

月ぬ美しゃ

 沖縄の古い童唄に、   月ぬ美しゃ十日三日   みやらび美しゃ十七ツ   ホーイチョーガ   というのがあります。なんだかとてもゆったりとして、気持ちが安らぐような唄です。そして、こんなことを想像するのです。  お ...