伊原間のイタシキビラ

伊原間のイタシキビラ

子供の獅子舞いも見事に

お盆送りの翌日の八月二十五日(旧暦七月十六日)、伊原間の伝統行事の一つであるイタシキビラが行われました。
 イタシキビラは、他の地域ではイタシキバラと言っているようですが、伊原間では、その昔からイタシキビラと言っています。
 イタシキビラは、お盆に招くもののいない無縁仏や悪霊などが、お盆が終わっても村内にさ迷って後世に帰らずにいるので、これを、魔物除けの威力があると言われている獅子によって村外に追い出すという行事です。
 午後6時半、伊原間公民館の広場に並べられた大人と子供の獅子の前で、神司により神事が行われ、その後、笛、ドラや太鼓、カネが賑やかに打ち鳴らされ、大人の獅子と子供の獅子がそれぞれ舞いました。
 子供の獅子は、七年ほど前から始まったそうです。獅子の中に入っているのは小中学生ですが、大人が顔負けするほど、とても上手に舞いました。
 獅子の舞いが終わると、小さな子供が獅子に噛んでもらうと元気な子に育つという謂われがあることから、次々と、小さな子を抱く親が現れて頭を噛んでもらいました。中には、大泣きして逃げだそうとする子供もいましたが、子供の健康を願い、必死で暴れる子供を押さえている親の姿が印象的でした。
 その後、獅子は、集落の東西南北の境界付近の道路に行き、舞って悪霊や魔物を追い払い、また、新築した家などに招かれて屋敷清めの舞いを行いました。
 このイタシキビラは、長い歴史があるそうでが、戦争によって獅子が焼却されてしまったことから一旦途絶えてしまいました。
 しかし、昭和二十二年に新しい獅子一対が完成したことから復活し、その後は毎年続けられています。
 なお、現在の獅子は三代目で、二代目(昭和二十二年)の獅子は、一昨年引退して石垣市立八重山博物館で保管展示中です。
 明和の大津波があった1771年以前は、700人以上の人が暮らしていたこの伊原間。こうした伝統行事が数多くあります。

古谷 修

この記事をシェアする