八重山10大ニュース 2012年(平成24年)

2012年は、尖閣諸島の国有化に端を発した中国漁業監視船や航空機の相次ぐ領海侵犯、2度にわたる北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に伴う市内への地対空誘導弾PAC3配備など、八重山が国際問題の舞台となった。自衛隊誘致で揺れる与那国町では、配備に反対する住民らが初の平和行進を実施。町に住民投票条例の制定を求めたが議会は否決した。新空港は来年3月7日の開港が正式決定。国内、国際線ターミナルビル建設も着々と進み、開港へのカウントダウンが始まった。これに合わせ、韓国からのチャーター便就航が決定。中国や香港などの旅行、航空会社関係者が相次いで来島。観光の国際化に向けた動きが本格化した。スポーツ面では新城幸也の五輪出場に郡民が沸いた。さらに、県民体育大会で女子バレーボールが15年ぶりの優勝。学童野球の少年オリオンズが九州大会を制覇。石垣第二中学校吹奏楽部や八重山高校カラーガード部の全国大会出場など、文武両道の活躍も目立った。9月の竹富町長選挙では現職の川満栄長町長が故・友利哲雄氏以来、16年ぶりの2選を果たした。民間託児所でうつぶせ寝による乳幼児の死亡事故が再発。2年前の教訓が生かされなかった。
 

1.尖閣国有化問題

10大ニュース_尖閣

4月17日、石原慎太郎東京都知事(当時)が購入を表明して以降、尖閣諸島は“波高し”の状態が今も続いている。政治団体や国会議員有志らが尖閣列島戦時遭難者の洋上慰霊祭を行ったが、「政治的な利用」を警戒する遺族会とすれ違いも。国は9月11日、魚釣島、北小島、南小島の3島を国有化。中国は猛反発して領海侵犯など繰り返しており、海上保安庁が厳重な警戒態勢を敷いている。石垣市が尖閣諸島の維持管理を目的に開設した寄付金口座には800万円近くが集まっているが、使える見通しは立っていない。
 

2.新城幸也が五輪出場

10大ニュース_大新城五輪・當山

7月のロンドン五輪では自転車男子個人ロードレースで、日本代表の新城幸也=石垣市登野城出身=が出場した。250キロのコースを5時間46分05秒で走り、145人中48位だった。五輪直前の6月のツール・ド・フランスは2009年、10年に続く3度目の出場。日本人初の3度の完走を遂げ、90時間4分0秒の総合84位。第4ステージでは200キロ以上にわたって果敢な走りを見せて敢闘賞を獲得し、日本人初の表彰台にあがった。新城は「4年後(リオデジャネイロ五輪)はメダルの可能性がある」と自信。
 

3.ミサイル実験でPAC3

10大ニュース_PAC3

「人工衛星」と称する北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験が2度も行われ、石垣島では自衛隊施設外として初めて地対空誘導弾PAC3が配備された。4月は450人規模、12月は570人規模の部隊が展開された。PAC3はイージス艦が打ち漏らした破片を迎撃する役割を担っていたが、石垣島全域をカバーできない射程だった。人口密集地を優先した事情があるが、北西部地区の住民から「北部には何でも格差がある。命は平等ではないか」との不満も出て、専門家から「島しょ防衛の展開訓練」との指摘もあった。
 

4.新空港開港へ着々

10大ニュース_新空港

滑走路2,000メートルの新石垣空港は8月末に滑走路本体工事が完了、その後の完成検査もクリアし、来年3月7日の供用開始が正式に決まった。計画が持ち上がってから37年目にしてようやく新しい空港が開港する。県と石垣市、新石垣空港早期建設を進める郡民の会は開港に向けた準備を進めており、新空港マスコットやPRソングが完成、内外に開港を発信している。一方、コンテナ輸送で第一次産業の振興を期待した中型機の就航が危ぶまれている。乗り入れ延期を決定したスカイマークに代わる格安航空会社の参入もまだ決まっていない。
 

5.与那国の自衛隊問題

10大ニュース_与那国自衛隊

自衛隊の誘致問題に揺れる与那国町で初めて平和行進が行われ、参加者が「与那国島に自衛隊はいらない」などと訴えた。八重山地区での平和行進は例年、石垣市のみで開催されてきたが、今年は沖縄の本土復帰40年の節目を記念して与那国町でも実施された。外間守吉町長は「人口減少の歯止め、地域経済の活性化につながる」として自衛隊を誘致する一方、「近隣諸国の不安をあおり、島が戦場になりかねない」と誘致反対の町民もいる。来年には町長選も行われるが、再び自衛隊誘致が争点となりそうだ。
 

6.スポーツで躍進

10大ニュース_當山

11月の全国高校駅伝大会「都大路」をかけた県大会で八重高女子が健闘。来年の全国都道府県対抗駅伝大会の県代表には、八重高女子の2人など過去最多の中高生4人が八重山から選出された。石垣中3年の川島洋斗は今月、U-16サッカー日本代表候補に招集された。10月の全国高校サッカー選手権大会県予選では八重高サッカー部が八重山初の3位となった。郡民体育大会先島開催の女子バレーでは八重山チームが15年ぶり2度目の優勝。8月には、九州学童軟式野球大会で少年オリオンズが15年ぶり2回目の九州制覇を果たした。
 

7.文化面も活躍光る

10大ニュース_八重高

県高校総合文化祭の郷土芸能部門で郡内3高校が優秀校に選出。八重校は演劇部門と同様来年8月の全国大会への出場を決めた。同校カラーガード部と石垣第二中吹奏楽・マーチングバンド部は、12月の全国大会でいずれも金賞を受賞。登野城小器楽クラブは県吹奏楽コンテストで金賞を獲得し、3年ぶりに九州大会への切符をつかんだ。平真小の平田育(はぐむ)、誇(ほこる)君は兄弟コンビで全国作文コンテストでトップクラスの成績を収めた。石垣中3年の上地睦海さんは全国俳句大会で優秀賞に輝いた。
 

8.国際化で観光回復へ

10大ニュース_アシアナ航空関係者来島

韓国のアシアナ航空が新空港の開港日にチャーター便を運航する事が決まった。中国や香港の旅行社や航空会社、英仏のダイビング専門旅行社の担当者らも相次いで郡内の観光地を視察し、国際定期航空路線就航への期待が高まっている。11月には中山義隆市長や経済界の代表らが訪台。定期便就航に向けた観光プロモーションを展開。観光の国際化に向けた動きが本格化した。国内観光も2007年の78万人余をピークに減少を続けていた郡内への観光入域も5年ぶりに好転。年間70万人台への回復が期待されている。
 

9.川満栄長氏が再選

10大ニュース_町長選

任期満了に伴う竹富町長選は現職の川満栄長氏(59)=西表住吉=が再選を果たした。町長選の2期目当選は1980年から96年まで4期務めた友利町政以来、町役場移転問題をめぐって推進派と反対派が交互に当選しており、推進派の川満氏再選で役場移転に向けた条件整備が進められるが、慎重な意見も根強い中、住民投票の是非が注目されている。選挙戦は当初、8月21日告示・26日投票の予定だったが、告示後に台風の影響で投票日を9月2日に変更。旧盆期間を含む12日間の長期戦となった。
 

10.託児所でまた死亡

10大ニュース_託児所事故

民間の託児所で乳児がうつぶせ寝のまま心肺停止となり、搬送先病院で死亡する事故が発生。2010年にも同様の事故があり、石垣市では届け出義務の無い託児所への調査指導ができるような独自の条例制定などについて検討していく姿勢を示した。2年前に死亡した乳児の保護者は、託児所の代表などに損害賠償を求め提訴。「今後、こういう事故が起きないよう、監督の立場にある県や市にしっかりとした対応を求めたい」と訴えた。民家で行っている託児所もあり、市による託児所の実態把握には時間がかかりそうだ。
 
 
提供:八重山毎日新聞社