八重山10大ニュース 2011年(平成23年)
目次
2011年の10大ニューストップは文部科学省を巻き込むまでに発展した中学校の教科書採択問題。いまだに解決の道筋が見えず、混迷の度を極めている。今年は未曾有の東日本大震災が発生し、八重山でも防災計画の見直しを迫られた。被災地からの避難者を支援する温かい交流が話題になった。景気低迷による観光需要の冷え込み、離島航路運賃引き上げ、波照間海運の運休、賛否両論与那国への自衛隊配置決定のニュースは、住民生活に暗い影を落とした。一方で石垣第二中男子バレーの全国大会出場など子どもたちの文武両道の活躍。ロッテ日本一、嘉弥真新也投手のプロ野球福岡ソフトバンクホークス入り、石垣牛の串焼きギネス世界記録は明るいニュースとなった。新石垣空港ターミナルビル着工、八重山の医療を守る郡民の会発足、18年ぶりの断水も10大ニュースに入った。
1.中学校の教科書採択問題
中学校の教科書採択問題は、教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長が断行した一連の「改革」が発端だった。新しい教科書をつくる会系の教科書を採択したやり方と酷似していたため、選定前から内外を巻き込んで反対行動が展開された。つくる会系教科書は公民分野で育鵬社版が選定されたが、竹教委が異を唱えて東京書籍版を採択。全員協議で東書を採択したが、文科省が無効と判断。これに全員協議の有効性の確認を求め、市内の保護者が行政訴訟を起こす事態にまで発展した。
2.東日本大震災の被災者支援
3月の東日本大震災と福島の原発事故は八重山にも大きな影響を与えた。八重山に住む東北出身者が「やえやま東北人会」を結成して支援を呼び掛けたほか、被災者、避難者支援ネットワーク石垣「ちむぐくる」が発足し、大震災後に八重山へ避難してきた人たちを支援。義援金も相次いだ。3市町の防災計画見直しにも高い関心が集まった。10月には「石垣・岩手かけはし交流協会」が北上マラソンに合わせて応援ツアーを実施、岩手県立盛岡第四高校と姉妹校の八重校関係者は現地で「牛汁炊き出し岩手応援大作戦」を行った。
3.新石垣空港ターミナルビル着工
新石垣空港開港を前に9月にはターミナルビルが着工。国際線用ターミナルの設計も進み、アクセス道路の設計が本格化してきた。本体部分の工事は用地造成も完了。滑走路や誘導路の舗装など最終段階の工事が行われており、2013年3月の開港に向けて順調に進んでいる。新石垣空港早期建設を進める郡民の会では新空港の愛称やマスコットキャラクターを決め、郡民あげて新空港の開港祝賀ムードが漂っている。台湾華信空港の定期便運航も現実味を帯び、さらに香港からのチャーター便就港も計画され国際便運航の期待も高まっている。
4.景気低迷、海と空ダブルパンチ
東日本大震災によって観光需要が冷え込み、八重山を訪れる観光客数は8年ぶりに60万人台に転落する見通し。離島航路は原油高騰のあおりで運賃を値上げしたあとに大震災の影響を受ける結果となり、共通チケット制の適用を広げる対応などを取ったが、波照間海運が12月11日から運休するなど混乱が続いた。一方、格安航空運賃のスカイマークが9月に宮古那覇便に就航したことから、石垣那覇便の割高感が急速に広がり、低減を求める署名運動が行われた。
5.与那国に自衛隊配置決定
防衛省は11月17日に与那国町祖納で開いた住民説明会で、同町の南牧場に陸自の沿岸監視部隊と空自移動警戒隊を配置することを正式に発表した。これに対し町と町議会に住民556人分の反対署名を提出した与那国改革会議は19日夜、祖納で「自衛隊にNO!与那国島を守る大集会」を開催。翌朝は祖納集落で抗議パレードを行い、自衛隊誘致反対をアピールした。一方、石垣港には2月19日に海自掃海艇2隻が初入港したのをはじめ、3月3日のイージス艦の検疫錨地入港など入港が相次ぎ平和団体などが怒りの拳を上げ、抗議した。
6.石垣牛串焼きギネス世界記録
石垣市で11月27日、石垣牛を使った串焼きの長さでギネス世界新記録となる107.6メートルが達成された。中山義隆市長を会長とする実行委員会が、石垣牛と新石垣空港の開港をPRしようと新空港建設用地で開催。1,710人が挑戦した。世界記録はレバノンの97.5メートル。この情報が寄せられたのが3日前だったが、急きょ当初目標の25.37メートルを変更して100メートルに設定。串が折れるハプニングに見舞われながらも一致団結して記録を達成した。会場には1万5,000人が来場。大渋滞も引き起こした。
7.小中高生文武両道の活躍
今年も郡内小中高校の児童生徒がスポーツや文化で活躍した。スポーツでは、石垣第二中男子バレー部が県大会初優勝、九州大会3位から全国大会にも出場。個人では、川島海斗君(石垣中2年)がサッカーU‐14に選抜され、八重山初の快挙となった。文化では、石垣中と黒島中が全国中学総合文化祭に参加。黒島中は竹富町から初出場、石垣中は3年ぶり2度目。八商工郷土芸能部が6度目の全国高校総合文化祭出場も果たした。他にも、明石小が交通安全子供自転車全国大会に4大会連続出場となり、団体3位、個人2位となった。
8.八重山の医療を守る郡民の会発足
官民一体となって地域医療を支えようと郡内31団体・個人が「八重山の医療を守る郡民の会」(会長・宮平康弘石垣市観光協会長)が3月に発足した。同会では県立八重山病院や各診療所に離着任する医師や看護士との交流を図り、がん治療に関する講演会を開催するなどの取り組みも実施。地域医療の充実に向けた活動を展開している。また、2年間にわたって常駐医師が不在だった町立竹富診療所には4月に掘田洋夫医師が東京から着任。島を挙げて堀田医師を歓迎した。
9.石垣で18年ぶり夜間断水
石垣島地方は6月から8月まで、降水量が平年の約4分の1と、極端な少雨傾向に見舞われ、市水道部は8月26日から上水道区域で、午後11時から翌朝午前6時まで7時間の給水制限(断水)に踏み切った。18年ぶりとなる給水制限に、市民は貯水容器の確保に奔走した。この状況に市は国に農業用水の使用を申請。農林水産大臣の「特例水利許可」を受け、底原ダムから農業用水15万トンを取水。制限給水を9月4日に解除した。農業用水の特例水利許可は今回が初めてで、緊急時の農業用水活用に道を開いた。
10.ロッテ日本一、嘉弥真プロ入り
昨シーズンプロ野球日本一になった千葉ロッテマリーンズの日本一記念パレードでは、沿道を埋めた市民約2万人が、チームフラッグを振り、紙吹雪が舞うなど歓喜に包まれた。プロ野球にも対応する規格を備えた公認新野球場が、計画着手から4年を経て念願の完成。日本一の千葉ロッテマリーンズの春季キャンプも行われ、連日市民が大勢押し寄せた。八重農から初のプロ野球選手が誕生。福岡ソフトバンクホークスから5位指名の嘉弥真新也投手(22)=白保=。「開幕一軍」を目指すと活躍が期待されている。
提供:八重山毎日新聞社