やいまーる外電

酒飲みのよしなしごと(7) 瓶のまま古酒にした泡盛を味わう

平成最後の年末にあたる12月に入ってから、「今年一年がんばった自分にご褒美」と、瓶のまま寝かしておいた泡盛を何本か空けた。
年末の大掃除という名目で、普段は「ないこと」にして忘れているシンクの奥の泡盛を詰めた段ボール箱を引っ張り出す。
そして、味してみたのだった。
 
 

【その一 泡波2合瓶 5年物】


詰め日のスタンプが薄くて見えづらいが、13年8月11日。
平成13年だとしたら、八重山デビューしてなかった頃だし、デビュー後しばらくは入手していたのは3合瓶ばかりだったと記憶するので、これは2013年だろう。
5年物である。
うーん・・・。
2合瓶は量が少ないからか、3合瓶よりも早く味が変わっている気がする。
そういえば以前、泡波ミニボトルを10年寝かしてみた。
変化が進みすぎて美味しくなくなっていたことを思い出した。
 
 

【その二 泡波ミニボトル 9年物】


というわけで、あまり寝かし過ぎても味が落ちるようなので、長らく寝かしておいた泡波ミニボトルも飲んでみた。
こちら、平成21年5月11日製造。
思ったより味が落ちていないでまろやか。アルコール濃度もしっかりしている印象。
以前飲んだ10年寝かしたものよりも比較にならないほど美味しい。
また、先に飲んだ2合瓶の方が、熟成が進みすぎたのか残念な感じだった。
「泡波は、製造時期によって味が違う時がある」と、波照間島で聞いたことがある。
先に飲んだ2合瓶と、このミニボトルの違いもそれなのだろうか…。
同じところに保存しておいたから、保存の違いはないと思うのだが。
 
 

【その三 宮の鶴4合瓶 11年物】


瓶詰めのままなので「仕次ぎ(*)」もせず、度数も30度だから、これも思い切って飲もう! と、次に封を開けたのは宮の鶴。
「2007年7月」のスタンプ。
石垣島での旅の途中で買ったのだと思う。 珍しく4合瓶。
こちらもまろやかでいい感じ。ただ、味のクセまで弱くなっているような印象。
度数ももしかしたら少し弱くなっているのかもしれない。
「飲みやすいけど、飲みすぎはいかん」と、家飲みではせいぜい水割り1~2杯。
とはいえ飲みやすいので、年末休みに入る前に飲み終わってしまいそうだ(苦笑)
 
 
(*)仕次ぎ…年代物の古酒にそれよりは少し若い古酒を注ぎ足すことで、
古酒の熟成した香りや芳醇さを保ちながら、酒を劣化させないようにする手法
(沖縄酒造組合サイト「琉球泡盛」より「100年古酒を可能にする『仕次ぎ』」
https://okinawa-awamori.or.jp/kusu/heirloom/blend/ )
 
 
瓶で何年か寝かせるにしても、アルコール度数が高い方が適しているのだろうとあらためて思う。
次の旅では、瓶で熟成させる用に43度の物を買ってこよう。
 
 
 
最近は飲みながら、珍しく読書だ。
(普段は、音楽やラジオを聴きながら、ネットで興味のままに様々な記事を見つけては読んでいることが多い。)
前回の『西表島探検』の記事でご紹介した安間繁樹さんの別の書籍を読んでいる。
『西表島自然誌』だ。

本当は正月休みに読もうと思って、あの後取り寄せた。
が、手元に届いてパラパラとページをめくったら、『西表島探検』に書かれていた、安間さんが20歳の時に初めて西表島に行きそのまま島を一周した時の詳しい話が第一章。
読み出すと止まらなくなってしまった。
パインを一晩で23個も食べて口の中が荒れたとか、道がない地域はザックを頭に乗せて首まで水に浸かって川を横切ったとか、「岩とび少年」と呼ばれる不思議な少年たちの姿を見た話など、興味深くてたまらない。
年末は色々やらねばならないことがあるというのに、美味しい島酒と八重山の本は筆者をそれから逃避させるのであった。
 
ついでに笹森儀助の『南嶋探検』も取り寄せた。
冬休みが楽しみだ。

 
それはそれとして、さて、どうしようか。
泡盛箱にはまだ、「もったいないから」と手を付けずに置いてある30度の泡盛の瓶がいくつかある。
生産が止まる前の与那国島の「舞富名」、島外ではなかなか入手できない宮古島の「豊見親」なども、寝かし過ぎるとせっかくの味が落ちてしまうのかもしれない。
「大切に取っておきたい」vs.「味が落ちない内に飲みたい」の葛藤がしばらく続きそうだ。
「もうじき正月だからな~」という甘いささやきもある。
しかしこれこそ今は「寝かして」ておいて、年末やるべきことをやらないと! …と悩ましいのであった。
 
 
今年の「やいまーる外電」の筆者の記事はこれが最後。
皆様よいお年をお迎えください。

八重山とわたし(2) 安間繁樹さん:『西表島探検』著者

昨年、2017年6月、西表島に関する一冊の本が発行された。
『西表島探検』、副題に「亜熱帯の森を行く」とある通り、観光ではなく道無き道をも行く山行記録だ。
そしてまた、未知の滝との出会いや悪戦苦闘のルート突破などの探検日記でもあり、西表島の自然紹介書でもあり、かつ、今は失われた昔の山道や廃村など島の歴史に触れられる書でもある。

 
著者は、安間繁樹(やすましげき)さん、74歳。

ヤスマニンジャヤモリやヤスマドビンダニなど、新種の生き物にその名がつけられている動物生態学者。
西表島に魅せられて50年あまり。
パスポートと種痘の予防接種が必要だった20歳の時に初めて西表島へ渡り、宿に泊まっていた人が持っていた地図を手書きで写し、42時間かけて崎山半島を除いて島を一周歩いた。
その時の装備を記録した自筆イラスト、読み始めた序盤にも登場して島内探検のイメージを掻き立てる若かりし頃の安間青年の姿が、書籍の帯にもある。

その後イリオモテヤマネコの生態研究を最初に手掛け、力を注いできた。
50数年間、島を隅々まで歩き、イリオモテヤマネコ以外の生き物、植物、地形、人々の暮らし・文化なども記録してきた。
これまでにもイリオモテヤマネコや西表島の自然などに関する書籍を書いてこられたが、本書は、そんな西表島に数多くある沢やルートを、60歳を超えた2005年になってから歩き直してきた記録である。
過去に歩いた時との道や植生の変化、見た物、体験したこと、感じたことなどが克明に記されている。
安間さんの五感を通した体験の記述により山行を追体験できる。
自分ではとうてい行けない西表島の奥地の植生や地形が、年月をかけて人知れずどのように変化し続けているかといったことへの想像も膨らむ。
 
『西表島探検』や氏の他の書籍を読むと、学術的な記録もありながら日記や物語のようでもある。
安間さんが感じたままを記録するようになったのは、明治時代に八重山を調査した笹森儀助の『南島探驗』の文章に影響を受けたのだと本書で知った。
筆者が数年前にご本人とのご縁をいただいた時、「笹森儀助の『南島探驗』をぜひ読んでみてください」と勧められた理由の一つがこれだったのかと、うなずけた。
 
 

ご縁をいただいて以来、この方のことをいつか「やいまーる外電」でご紹介したいと思っていた。
「お元気だろうか」と最近ふと思い、ネットの海で情報を探しているうちに本書を見つけた。
読み始めたらグイグイと引き込まれた。
そして思い切ってご連絡したのが、今回のきっかけだ。
再会の場となった都内の老舗の沖縄料理屋「きよ香」は、八重山出身の方が経営している。
せっかくの機会なので、友人たちにも声をかけ、安間さんを囲んで沖縄料理屋でのひと時を過ごした。
 
若い頃には石垣島で教員をしたこともあるが、研究に専念したいと辞職し、大学院を受けてこの道に進まれた。
イリオモテヤマネコや西表島の話はもちろん、沖縄や八重山の文化、もう一つのライフワークであるボルネオ島でのフィールドワークの話など、多岐にわたる興味深いお話がうかがえた。

泊まりの山歩きを中学時代から始め、高校時代には山岳部、研究で様々な山に分け入って活動していた安間さんによると、最高峰が標高400m台の西表島の山々は、高さだけは初心者レベル。
しかし、ルートによっては滑りやすい所や、転落の危険がある場所もかなりある。
また、背丈より高い植物に覆われて方向を見失いそうな不安感を覚えやすく、かつてはあった踏み跡が無くなっている場所も多いのが特徴。
実際にご自身も道を見失いそうになったことは何度もあるという。
本書にも、方角も自分のいる場所もわからなくなった経験が書かれている。
泡盛を飲みながらそんな話をする安間さんは、「見通しが悪くても、大きく遠回りしても、地形を意識しながら歩いているといずれ沢や海岸線に出るから大丈夫。」と笑顔で語った。
長年かけて島の隅々まで歩き回り、豊富な経験を積んできた人だからこそにじみ出る、必ず戻れるという確信が伝わってきた。

約50年間の西表島での全行程を記録した地図を見せていただいた。
そこには、内陸部や海岸沿い、尾根道、沢筋と縦横無尽に島を歩いた足跡が網目のように島の隅々まで書き込まれていた。
本書にもそんな記録に基づいたルートマップや地形図が数多く挿入されている。
写真、図も豊富なことが、まだ行ったことのない西表島の内陸部を理解することを大いに助けてくれる。

安間さんは、これからも島の自然を調査し続ける予定だ。
滝の調査もしていきたい、と。
「滝」とは2m以上段差がある水の流れとみなし、その条件に当てはまる滝は、西表島内に1000はあると試算している。
最近はGPSやICレコーダーを導入し、そういった滝の場所を克明に記録しているのだそうだ。
80歳までにはそれらも含めた『西表島探検』第二弾を書き上げたいと語られた。

20歳の時に初めて足を踏み入れた西表島に魅入られ、家庭の事情で一度は断念していた研究者の夢を実現して以来、今もやりたいことに情熱を傾け続ける安間さん。
その姿勢に、「100年人生」と言われるこれからの時代を有意義に生きる一例を見せていただけた気がした。
 
 

【安間繁樹さんの八重山関係の著書】

・『西表島探検』(あっぷる出版社)
・『イリオモテヤマネコ 狩りの行動学』(あっぷる出版社)
・『西表島自然誌 ―幻のオオヤマネコを求めて』(晶文社)
・『石垣島自然誌』(晶文社)
・『闇の王者イリオモテヤマネコ』(ポプラ社)
・『やまねこカナの冒険』(ポプラ社)
・『動物が すき!  イリオモオテヤマネコをとおしてみえたこと』(福音館書店)
・『原生林の闇に生きる イリオモテヤマネコ 日本の野生動物6』(汐文社)
・『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)
・『琉球列島―生物の多様性と列島のおいたち』(東海大学出版会)
・『マヤランド西表島(全4分冊)』(新星図書出版)

 

【余談】


『月刊やいま』2018年7月号の「資料こぼればなし49」は、この安間さんとイリオモテヤマネコ研究の特集だ。
「安間繁樹が見た崎枝・西表-イリオモテヤマネコの研究-」(p.34)として、いくつかの書籍やご本人について紹介されているので、ぜひバックナンバーをご覧いただきたい。