映画「海の彼方」

上映期間:2017年11月12日(日)~11月21日(火)
場所:京都みなみ会館(京都府)

 

 
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【チラシより】

80年を超えて探し求めるアイデンティティー 石垣島から、台湾への帰郷
人生最後の里帰りの旅

1930年代 石垣島へ渡った台湾移民
台湾人とも日本人とも認められず時代に翻弄された
ある一家の3世代にわたる人生と記憶の軌跡
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主人公である玉木玉代おばぁは、台湾から夫・王氏と石垣島に移住してきた台湾人。
88歳の時、全国から集まった100名超の子や孫、ひ孫たちがそれを祝った。
その後、人生最後になるかもしれない台湾への里帰りをし、懐かしい人々に会う旅をする。
おばぁの娘二人と、孫の男性二人、5人の旅だ。
そのお祝いと旅の様子と、その時に至るまでのおばぁの88年の人生や、その間の台湾と日本の歴史、三世代それぞれの人が感じてきた日本での移民としての生きづらさや日本人との関係の変化などのインタビューなどで構成されている。
 
3世代それぞれの立場で、台湾と石垣島について思いをはせ、自分は何者かということを考え再確認するプロセスの記録でもあった。
 
第二次世界大戦の後、帰化した際の名字は、44歳で若くして石垣島で生涯を終えたおばぁの夫の名前にちなんでいるということを、孫たちは知らない。
子や孫が日本の教育を受けられるようにという思いで帰化したことも、おばぁの娘たちは知っている。
2世であるおばぁの娘や息子世代は、台湾語を聞いて理解することはできても、話すことはできない。
理由は、子どもの頃差別されたから。
母親であるおばぁが話す台湾語を身に付けようという発想がなかった子ども時代。
 
東京でミュージシャンをしている三世の男性は、台湾への旅で、おばぁの親戚筋の少年と通訳アプリでの会話を試みる。せめて単語だけでも話してみようという姿が映される。
孫の世代の男性二人は、台湾で食べた料理の味は、いつもおばぁや母親が作っている料理の味だったことに気がつく。
初めて来た国なのに、初めてでない懐かしさを町のそこここに感じる。
意識していなかったけれど、身体が覚えている自分のルーツ。
 
おばぁの子どもや孫が、台湾で出会った自分たちの親戚にあたる人たちとのご縁を今後も維持していきたいと思ったり、おばぁがいつかこの世を去っても親戚のみんなが帰る場所(実家)を担うのは本家筋ではない自分かも知れないと考えるようになる。
おばぁの手料理の味を継いでいこうという孫も出てきた。
おばぁの人生をより深く知ることで、それぞれの人生へその一部がさらに取り込まれ、受け継がれていく。
それこそが、アイデンティティーの一部なのだろうなと思った。
 
約2年前に見た、台湾からの移民によるパイナップル産業の発展と、八重山と台湾の関係の歴史上の変遷などがテーマだった映画「はるかなるオンライ山」は、どちらかと言えば、産業や歴史の全体的な物だったような印象が残っている。
 
今回の「海の彼方」は、その中の一人の女性とその家族にスポットライトを当てた作品だと言える。
 
両方の映画を見たことで、八重山と台湾での人々の行き来や歴史、そこで生きてきた人たちへの理解が深まったように思えた。
 
親戚・家族のつながりを大切にしよう。そんなことも考えさせられた作品だった。
 
映画館を出たら、深まりゆく秋に色づいた樹々に囲まれた東寺の五重塔が、さわやかな青空を背景にそびえているのが見えた。


 
本作品の上映期間は短い。
京都ではちょうど紅葉が見頃だった。
最終日である21日は、東寺で「弘法さん」と呼ばれる月一回の大規模な市がある。
映画と古都の紅葉。この時期ならではの楽しみ方はいかがだろうか。

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