消滅危機言語・与那国語の与那国島の昔話の読み聞かせ と 能楽師×舞踊家×紙芝居のコラボレーション
日時
2023年3月21日(祝・火)14時~
場所
新宿シアターミラクル
(与那国島側の出演者たち)
みなさんは「消滅危機言語」というものをご存じだろうか。
平成21年にユネスコによって指定された、世界各国で消滅の危機にさらされている言語のことだ。
日本では8つの言語が指定されており、その中の一つが「与那国語」で、現在この言葉を話せるのは300人未満と言われている。
去る3月21日、一般社団法人亜細亜の骨による「未来創造 Diversity Art Festival 2023」のプログラムの一つとして、この与那国語による島の昔話の読み聞かせと舞台などを、新宿の会場と与那国島をオンラインで繋いで実施するイベントが開催された。
筆者はたまたまこの時期に与那国島に滞在していたので、与那国側の会場の様子をレポートする。
与那国島の会場は、島で陶器を作っている山口陶房。
ここから東京会場のステージで能楽師や舞踊家が役を演じた物語に歌や演奏を合わせたり、島側からの与那国語による昔話の読み聞かせに合わせて新宿会場の舞台で演技などが行われたりした。
『3人の友達と化け物』、『犬女房』、『パアー鳥』という3つの物語が上演された。
(与那国語の昔話を読む、与那国島民俗資料館の池間龍一さん)
(東京会場ではその様子が舞台上の大スクリーンに映し出される)
(出番を待ちながら東京のステージが映るモニターに見入る子どもたち)
3つの演目が終わった後に、與那覇桂子さん(太鼓・唄)、山口和昭さん(笛、山口陶房)による島の古謡の演奏、最後に島の小学生たちの太鼓や笛も加わり、ドゥンタ(巻き踊り)が演奏された。
与那国島の山口陶房の庭と東京のステージ上で島の伝統衣装ドゥタティを着た人々が輪になり、つないだ両手を上げたり下げたりしながら「イェーヘイ」という掛け声とともに踊り、距離を隔てて一つになった。
島の出演者紹介を聞いていると、楽器を演奏した小学生の子どもたちはこうした島の伝統的な歌や音楽が好きで、日ごろから誰かの誕生日に演奏しに行ったりしているそうだ。
島の昔話を朗読した男の子は祖父と与那国語で会話していると。
子どもたちの生活の中に伝統文化や芸能、言葉が自然と当たり前にあふれていれば、彼らもそれに触れる機会が自然と多くなり、心身にしみこむように「身について」行く可能性が高いのかもしれない。
この日昔話の朗読者の一人として出演されると知らずにその前日に与那国島民俗資料館を訪ね、池間龍一さんに島のことをいろいろうかがった。
その際、すでに昭和40年代前半を最後に行われなくなった祭りもあるとおっしゃっていた。
現在も祭りや行事の維持が難しくなってきているものもあるという。
祭りや行事が開催されなくなると、言葉や唄、芸能が忘れ去られていきやすい。
言葉や唄や踊りができる人が減ってくると、祭りや行事の維持が難しくなる。
これは与那国島に限らず、八重山、いや、内地の各地でも同様なのだろう。
冒頭に「消滅危機言語」という言葉を紹介したが、消滅の危機にあるのはその地域の暮らしの変化に影響を受けるもっと幅広い範囲・種類に点在していると、今回与那国を旅して認識した。
与那国島には、固有の植物・生き物も少なくないという。それらの中にも絶滅の危機にさらされているものがあると、アヤミハビル館で知った。
こういった様々なことへの危機感を持った人たちが、その人たちなりに映像として残そうと試みたのが、昨年見た与那国島を舞台にした映画2本なのかもしれないと、自分の中でつながったイベントでもあった。
過去の記事
与那国島が舞台の映画、全国各地で続々上映
(「ばちらぬん」「ヨナグニ ~旅立ちの島~」)
あまくまたーかー