猿になった金持ち

 ある年の暮れ、ひとりのみすぼらしい姿の老人が、ある部落にやってきました。その老人は村のあちこちの家に行って少しばかりの食べ物を乞いましたが、どの家でも「明日は大切な正月の日だ」といって、その老人を追い払いました。とうとう、村一番の貧乏人の家に来てしまいました。
 その家では、「この家は貧乏でお湯と火くらいしかないけれど、それでもよかったら」といって、老人を迎えてくれました。
 さて、次の日、金持ちの家では、みんなで酒を飲み、おいしいごちそうを食べて、大賑わいで正月を祝いました。
 そして、ふととなりの人を見てびっくり。その人は猿になって、両手でごちそうをつかんでは、むしゃむしゃやっているではありませんか。まわりを見まわすと、「ヒヤーッ」、もうみんな猿になってあちこちでごちそうをひっくり返して大さわぎをしています。そして、とうとう家中めちゃくちゃにして、山の中に走っていってしまったそうです。

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